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「ストレンジャー・シングス」から韓国ドラマまで、心つかまれる“SFドラマ”の世界

一度ガッと心をつかまれたら、荒唐無稽で突拍子もない世界であってもすんなりと入り込め、気づいたらハマっている、そんなSFドラマシリーズに注目

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Netflixオリジナルシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」独占配信中
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主人公が時空を超えて旅をしたり、宇宙人や“人ならざる者”と恋に落ちたりと、特殊で刺激的な設定が物語の魅力となるSFドラマシリーズ。こうした非日常の世界にはなかなか入り込みづらいものだが、しっかりとした人物設定や背景、ストーリーラインを盛り込んだ脚本や、撮影、美術、衣装、音楽などに十分な説得力があれば話は別。一度ガッと心をつかまれたら、荒唐無稽な突拍子もない世界であってもすんなりと受け入れていくことができる。見始めたらいつのまにかハマっている、そんなドラマシリーズに注目してみた。

あの「トッケビ」もSF!?
引き込ませるのが巧い韓国ドラマ


「ホテルデルーナ」

いわゆるSFジャンルは“女性向け”ではない、と一体誰が決めつけたのだろう。いま熱い注目を集める韓国ドラマにおいて、こうした作風はラブストーリーに限らずいくらでもある。例えば、コン・ユ主演の大ヒット作「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」(2016-2017)は900年前の英雄だったキム・シン(コン・ユ)が“不滅の命”を生きる“トッケビ”(朝鮮半島に伝わる精霊、妖怪のようなもの)となってしまう話。“不滅の命”を終わらせることができる“トッケビの花嫁”ウンタク(キム・ゴウン)と、矛盾をはらんだ切ない恋を繰り広げる。壮大なロケーションも相まって、時を超えて生き続けるトッケビの儚い神秘性はコン・ユにぴったりで、死神(イ・ドンウク)との長身コンビも話題となった。

記憶に新しいところでは、「ザ・キング:永遠の君主」(2020)はパラレルワールドが舞台。異なる2つの並行世界の主人公、皇帝イ・ゴン(イ・ミンホ)と女性刑事チョン・テウル(こちらも演じるのはキム・ゴウン)との時空を超えた恋が話題を読んだ。脚本のキム・ウンスクは「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」ほか「太陽の末裔Love Under The Sun」「青い海の伝説」などのヒット作で知られるベテランで、脚本の練り込まれ方は流石といえる。

「星から来たあなた」(2013-2014)は、「サイコだけど大丈夫」キム・スヒョンが、朝鮮時代から現代まで400年にわたり地球で暮らしている、ほかの“星から来た”異星人ミンジュンを演じるラブコメディ。ミンジュンの視力や聴力は地球人の7倍、時を止める能力や物を動かせるテレキネシスを持ち、言うなれば“スーパーマン”のようなもの。3か月後に故郷の星に帰ろうとしていた彼は、人気が傾きかけたトップ女優ソンイ(チョン・ジヒョン)と運命的に出会う。キム・スヒョンは、感情を抑えた“ツンデレ”な異星人の演技でアジア中を夢中にさせた。

人気ジャンルである“タイムスリップ”ものの「ナイン~9回の時間旅行~」や、ウェブ漫画の中の世界と現実を行き来する「W-君と僕の世界-」のソン・ジェジョン脚本による中世の雰囲気たっぷり「アルハンブラ宮殿の思い出」(2018)は、ヒョンビンパク・シネが共演。スペインのグラナダやハンガリーのブダペストなどヨーロッパを舞台に、韓国初のAR(拡張現実)ゲームの中に入り込むドラマを創り上げた。

SFやファンタジーの世界観をより確かなものにするためには、こうした人気実力派キャスト陣の存在感やVFXを多用してもブレない演技力が不可欠。ほかにも、SFと相性がいいと思われる俳優の1人にヨ・ジングがいる。子役から活躍しており、安定感はお墨付き。グローバルガールズグループ・デビュープロジェクト「Girls Planet 999:少女祭典」で「プラネットマスター」と呼ばれるMCを務めていることでも話題だが、「スタートアップ:夢の扉」ではAIであるヨンシルの声を務め、日本の漫画原作の「絶対彼氏。」では恋愛用ロボットにも。「サークル ~繋がった二つの世界~」は2017年と2037年、2つの世界が舞台となっていた。

特に、アメリカでのリメイクやミュージカル化が決定している「ホテルデルーナ」(2019)では、「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」「麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~」など俳優としてもすばらしい活躍を見せる歌手のIUと共演。幽霊だけが泊まれるホテルのオーナーとホテリエとして、様々な人間ドラマの間に思いを通わせていった。IU演じるマンウォルは1300年以上も生き続けている、不可思議な存在。その自由自在に変わる衣装、ホテルのセットなども優美で、ファンタジック×時々ホラーなのも見どころだ。

また、JTBC10周年特別ドラマとして壮大なスケールで描かれた「シーシュポス:The Myth」(2021)は、チョ・スンウ演じる天才工学者ハン・テスルの発明した装置で、荒廃した未来の韓国からパク・シネ演じるソヘがやってくるSFアクションエンターテイメント。次はどんな展開が待っているのか、“未来が読めない”状態でハラハラする。天才工学者テスルの軽妙さは“アイアンマン”のトニー・スタークを彷彿とさせ、ソへは“ブラック・ウィドウ”のごとく謎を抱えたクールなファイターで、「BTS」ファンのARMYでもある。

非現実的な世界だからこそ、女性たちが大活躍できる点もSFの魅力。高校の保健教師が“人には見えないものが見える”能力で秘密や謎を解き明かしていく「保健教師アン・ウニョン」(2020)は、チョン・セランによる人気小説が原作で主演は『82年生まれ、キム・ジヨン』のチョン・ユミ、監督はイ・ギョンミと女性キャスト&スタッフたちが中心となり、見るも愉快でユニークなSFファンタジー学園ドラマを誕生させている。

韓国ドラマでは、SFの世界でも女性たちが力強い。それに、緻密に組み立てられたストーリーにおいて具体的な設定を説明できたり、丁寧な人物描写ができたりと、1本あたり16話~20話ほどある韓国ドラマゆえの“時間”もプラスに働いているといえるだろう。

TVシリーズだからこそ貫ける“自由度”と“探求心”


「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シーズン1

SFやファンタジー、ホラーといったジャンル系に際立った強みを見せるのは、Netflixオリジナルシリーズだ。なかでも1980年代アメリカの小さな町ホーキンスを舞台にした「ストレンジャー・シングス 未知の世界」(2016-)は、世界的ヒットを記録し大きなムーブメントを巻き起こしたNetflixを代表する作品。イレブン役でブレイクしたミリー・ボビー・ブラウンは、いまや次世代を代表するアイコンであり、アクティビストでもある。

「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シーズン3

オタクの仲良し少年4人組の1人、ウィルの失踪事件を巡り、家族や友人、地元警察が不可解な事件に巻き込まれていく本作。マイク役のフィン・ヴォルフハルトが出演した『IT/イット』シリーズをはじめとしたスティーヴン・キングや、『E.T.』『未知との遭遇』『グーニーズ』などスティーヴン・スピルバーグからの影響が色濃く遊び心満載で、シーズンを重ねるごとにスケールが拡大しながら、身近で起きているSF現象をきっかけに個々の体験や過去が浮き彫りになっていく人間ドラマが面白い。クリエイターのダファー兄弟がスピルバーグとタッグを組み、キングの小説「タリスマン」をNetflixでドラマ化するのも楽しみだ。

また、無数のラインナップの中から“さて、どれを見たらいいだろう?”と迷ったら、イギリス発の1話完結アンソロジーシリーズ「ブラック・ミラー」(2011-)がオススメ。疑いもせず受け入れてきたテクノロジーにより、あらゆる面で変化した現実の社会と地続きとなる様々な世界の歪み、人間の不安感や強迫観念などをサスペンスフルに描いていく。現在シーズン5まで、各3~6話、視聴者が物語を選択して結末が変わるインタラクティブ映画『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』も配信中だが、1話完結であるため、気になったエピソードから自由に見ることができる。

『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』

日常の延長線上で十分あり得る話なのが、『ジュラシック・ワールド』ブライス・ダラス・ハワード主演、シーズン3の第1話「ランク社会」で、SNSでの印象評価ですべてがランク付けされる社会が舞台。『アベンジャーズ』シリーズのヘイリー・アトウェル&『スター・ウォーズ』シリーズのドーナル・グリーソンによるシーズン2第1話「ずっと側にいて」や、「ロキ」ググ・バサ=ロー&『ターミネーター:ニュー・フェイト』マッケンジー・デイヴィスによるシーズン3第4話「サン・ジュニペロ」などは愛する者の生死とSFの世界が交わっていく必見作。

「サン・ジュニペロ」に続いてエミー賞で評価されたシーズン4の第1話「宇宙船カリスター号」は、現実世界では蔑ろにされているゲーム開発者(ジェシー・プレモンス)が自分の作ったゲームの世界では鬱憤を晴らすかのように傍若無人になる。女性スタッフ(クリスティン・ミリオティ)を中心とした彼への反撃は、#MeToo運動と重なるものでもあった。スマートフォンやタブレットをロックしたあの黒い画面が“ブラック・ミラー”となって、私たちの“近い未来の姿”を映し出しているわけだ。

ポン・ジュノ監督による映画版をジェニファー・コネリーダヴィード・ディグス(「ブラインドスポッティング」)でドラマ化、「オーファン・ブラック 暴走遺伝子」の脚本家がクリエイターを担当し、ポン・ジュノ監督も製作総指揮に名を連ねる「スノーピアサー」(2020-)も、もしかしたらいまの地球の行く末かもしれない。

「スノーピアサー」シーズン2

さらに、異世界でありながら現実の行く先を思わせるこうした作品にこなれてきたなら、打ち切り反対運動が巻き起こるほどの熱狂者を生みだした『マトリックス』ウォシャウスキー姉妹による「Sense8/センス8」(2015-2018)や、気鋭クリエイター ブリット・マーリングによる未完の「The OA」(2016-2019)などにも手を伸ばしてみてほしい。

「ウエストワールド」シーズン3

ヒュー・ジャックマン主演『レミニセンス』を生みだしたリサ・ジョイ監督の「ウエストワールド」(2016-/U-NEXT配信)や、マーガレット・アトウッドのベストセラーをドラマ化した「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」(2017-/Hulu配信)などにおいても、女性クリエイターとともに女性キャラクターたちの奮起とその強さを目の当たりにできる。

“女性はSFに疎い”と一体誰が言い出したのだろう? 現在支持されている作品の多くはこうした女性たちがいたからこそ、心奪われる世界を私たちに見せてくれるのに。

《上原礼子》

「好き」が増え続けるライター 上原礼子

出版社、編集プロダクションにて情報誌・女性誌ほか、看護専門誌の映画欄を長年担当。海外ドラマ・韓国ドラマ・K-POPなどにもハマり、ご縁あって「好き」を書くことに。ポン・ジュノ監督の言葉どおり「字幕の1インチ」を超えていくことが楽しい。保護猫の執事。LGBTQ+ Ally。レイア姫は永遠の心のヒーロー。

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