《text:西森路代》
GENERATIONS from EXILE TRIBEのメンバー全員が参加したそれぞれのショートフィルム『昨日より赤く明日より青く-CINEMA FIGHTERS project-』が11月26日(金)から公開となる。
このCINEMA FIGHTERS projectは、作詞家 小竹正人の歌詞の世界観を脚本、映像(ショートフィルム)化。 新進気鋭から著名な監督をむかえ、主演 キャストにLDHメンバーが参加、EXILE HIROがエグゼクティブプロデューサー、SSFF&ASIA代表、別所哲也の企画・プロデュースでショートフィルムを製作し、LDH×SSFF&ASIAがタッグを組むプロジェクトである。
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2018年1月に第一弾「CINEMA FIGHTERS」が上映され、その後、2018年6月に第二弾の「ウタモノガタリ」、2019年11月に第三弾の「その瞬間、僕は泣きたくなった」と続き、今回第四弾の「昨日より赤く明日より青く」はGENERATIONSのメンバーが全員参加して制作された。これまでにこのプロジェクトに参加した映画監督は、河瀨直美や石井裕也、三池崇史、行定勲など、そうそうたる顔ぶればかりで、LDHのアーティストたちの演技者としての扉を開けるだけでなく、日本映画界の才能や新たな可能性を生み出す企画になりつつある。
「昨日より赤く明日より青く」でも、さまざまなジャンルから6人の監督が集結し、GENERATIONSの面々や、LDH所属アーティストの楽曲の魅力を何倍にもして見せた。
『砕け散るところを見せてあげる』や『DANCING MARY/ダンシング・マリー』などが、国内外で高い評価を受けているSABU監督の「BLUE BIRD」は、佐野玲於演じる兄と醍醐虎汰朗演じる弟のほろ苦くもどこか温かさも感じる物語。
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『潔く柔く』や『ひるなかの流星』、『午前0時、キスしに来てよ』など、数々の青春映画を手掛けてきた新城毅彦が監督、関口メンディーが主演で数原龍友が主題歌を担当した「真夜中のひとりたち」は、偶然、出会った男女が深夜の東京を彷徨うストーリー。
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『味園ユニバース』や、ドラマ「コタキ兄弟と四苦八苦」など意欲的に作品を発表し続けている山下敦弘の「言えない二人」は、白濱亜嵐、門脇麦の共演で、タイトル通り、なかなか口に出せない思いを抱きながら過ごすふたりの終電までの時間を繊細に追う。
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『聖の青春』や『パラレルワールド・ラブストーリー』の監督を務めるほかドキュメンタリーの制作も行っている森義隆の「怪談 満月蛤坂」は、オリジナルの現代の怪談。料亭の料理人役の中務裕太と山田真歩演じる得体のしれない女性の艶のある物語だ。
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『ディストラクション・ベイビーズ』や『宮本から君へ』が国内の映画賞で高く評価された真利子哲也は、コロナ禍の日本に帰国した片寄涼太演じる晴人とシカゴにいる恋人とのすれ違いを描く。
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EXILEや三代目 J SOUL BROTHERSなどのミュージックビデオを多数手掛け、近年は『HiGH&LOW』シリーズや『小説の神様 君としか描けない物語』など、映画監督としても活躍する久保茂昭は、近未来を舞台に中国語を話す女性と料理の宅配サービス員の出会いから始まるストーリー。
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6編それぞれに、まったく違う顔の物語が展開していく。
特に目を引いたのが、中務演じる料理人と謎の女の繰り広げる「怪談 満月蛤坂」だろうか。「日本三大怪談」と言われる四谷怪談・番町皿屋敷・牡丹燈籠は、どれも女性がこの世に思いを残したまま亡くなってしまったという共通項があるが、本作もそんな怪談のセオリーを引き継ぎながら、現代らしいジェンダー観ものぞかせる興味深い物語となっている。山田真歩演じる謎の女性も、山田の持つはかなさ、謎めいたところがぴったりとハマっており、そんな彼女に情にほだされ、またそれをきっかけに、不可思議な出来事に巻き込まれていく中務の表情の変化にも注目だ。
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また、料理人・良介の働く料亭の女将役として、劇団EXILE総出演の映画『JAM』や「JAM -the drama-」で昌子役としておなじみの筒井真理子が存在感を放っている。
片寄涼太主演、真利子哲也監督の「COYOTE」では、これまではどこに出しても恥ずかしくない好青年を演じることの多かった片寄涼太の違った一面が見られる作品である。とはいえ、片寄の役は、2020年にあるはずだった東京オリンピックのチケットを買うためにシカゴから日本に一時帰国している好青年である。そんな彼が、コロナ禍の世の中の理不尽な出来事に巻き込まれ、次第に、自身の中にある様々な感情が引き出されていくその過程を見るべき作品となっている。
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真利子哲也監督は、自身の映画『ディストラクション・ベイビーズ』で、内なる暴力性とどう向き合えばいいのかというテーマに取り組んでいた。またコロナ禍では、世界中の友人たちに渦中の生活をディレクションしながら個々で撮影し、それを元に作り上げた『MAYDAY』という作品もあった。『COYOTE』は、こうした作品での経験をヒントにして出来上がった作品だったのではないだろうか。短編にしておくにはもったいないテーマで、ファンのみならず、広く見てもらいたい作品に仕上がっている。
『昨日より赤く明日より青く-CINEMA FIGHTERS project-』公式サイト
<提供:CINEMA FIGHTERS project>