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【インタビュー】有村架純と石橋静河はどんな思いを抱いて抱きしめ合ったのか? “分断”の時代に大切な他者へのまなざし

「保護司」という言葉自体、この作品で初めて耳にするという人も多いだろう。保護司は、犯罪や非行を犯した人々の更生や社会復帰を支える活動に従事する人々。非常勤の国家公務員ではあるが、給与は支給されず、あくまで民間のボランティア活動である。

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石橋静河&有村架純「WOWOWのオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」/photo:Maho Korogi
石橋静河&有村架純「WOWOWのオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」/photo:Maho Korogi 全 12 枚
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良い関係性を築く上で大事なことは「知らない部分をリスペクトする」


――岸善幸監督の演出で印象的だったことや驚きを感じたことがあれば教えてください。

有村:岸さんは、すごく役者さんのことを信頼して現場にいらっしゃるんだなというのを感じました。自分も信頼していただけているんだなと感じたし、それは同じ目線で考え、苦しんでくださったからだなと思います。現場でテストをやらないんですよ。段取りだけで、すぐに本番なんですけど、“未完成”の部分を楽しんでいらして、私もそれに影響を受けて、とても楽しく過ごすことができました。

岸さんは、撮影のたびに佳代について「いまの佳代はかわいかった」「いまのは美しく、キレイだった」と「かわいい」と「キレイ」を使い分けて表現してくださるんです。岸さんの言う「美しい、キレイ」というのは、佳代の人間的な“陰”の部分が出たときのことで、それが妙に照れくさくて(笑)、印象に残ってます。

石橋:テストなしで本番にいくというのは事前に聞いていて、緊張していたんですが、それは役者を信頼してるからなんですね。偽りの信頼ではなく「100%信頼してるから」って言われると嬉しいじゃないですか? まず「ここにいていいんだ」という思いを与えられる嬉しさがあったし、それだけ信頼されているからこそ「私に何ができるのか?」というある種の怖れも感じました。そこまで託してくれるのが嬉しかったし、その結果、岸さんが「OK」ならば、私はどう映ろうが、何を言われようが何でもいいから本気でやります! という気持ちになりました。

すごく不思議な方だなと思います。もちろんフィクションだし、書かれた本をああしようこうしようと工夫して、みんなでひとつの世界を作り上げていくものだけど、岸さんにはそれが到達すべき“真実”が見えてるんだろうなって気がして、そこに向かって周りもエネルギーを注いで、巻き込まれていく、座組全体がうねりみたいになって、作りものだけど、ある苦しみを伝えるんだという意思が感じられて、すごく楽しい現場でした。

――保護司と保護観察対象者として出会った、性格もこれまで育ってきた環境も全く異なる佳代とみどりですが、ドラマを通じて互いを理解し合い、“シスターフッド”ともいえる連帯、絆を紡いでいきます。こうした関係性を築く上で大切なこと、必要なことは何だと思いますか?

有村:他人を受け入れて、どれだけ許し合えるか? どれだけ自分と違っても、その人の良いところがひとつ見つかれば「合わないな」と思うところが全部覆されると思っていて、私は人と会う時、なるべく良いところを探そうと思っています。良いも悪いも全部その人だから、なるべく全てを受け入れて関わりたいなと思います。

石橋:みどりと佳代ちゃんの場合、性格も育ってきた環境も全く違うけど、同じだけの苦しみを持っていること――それを伝え合わなくても感じられたからこそ、あそこまでぶつかり合えたし、助け合っていこうとなれたんだと思います。なかなか全ての人とそうなるのは難しいですが、例えば私はいま27歳で、新しい友達と出会っても、その人のそれまでの人生については知らないし、家族であっても、全てを知っている気になっても、自分の知らないことってたくさんあると思います。前提としてその人の全部をわかることはないと思うことは、決して突き放すってことじゃなく、良い関係性を築く上で大事なことだと思います。知らない部分をリスペクトすることが大事だし、そうやって接していきたいですね。

――ドラマ序盤でみどりが母親に抱きしめられるシーン、打ちひしがれた佳代をみどりが優しく抱きとめるシーンなどドラマ通じて「抱擁」のシーンが非常に印象的でした。どのような思いであのシーンに臨まれたんでしょうか?

有村:佳代にとって、みどりさんは“つっかえ棒”のような存在というか、支えだったので、もしみどりさんがいなかったら、佳代はあそこまで頑張れず、諦めていたと思います。ある意味で佳代が、人間らしさを見せられる唯一の人だったのかなと。そういう存在が佳代にできたことは、個人的にすごく嬉しかったですし、苦しみや葛藤を抱えてあの時、みどりさんだったから身を委ねることができたんだろうなって感じます。

石橋:確かに、抱きしめられたり、抱きしめるシーンは印象的なシーンが多いなっていまふり返って思いました。最初、母親と対峙して、抱きしめてもらうシーンはすごく難しくて…。抱きしめてもらう前に「お母さんに抱きしめてもらいたかった」というセリフあるんですけど、それがどういう気持ちなんだろうかっていうのがわからなくて、私は家族とすぐハグするような、いつも甘えられる環境で育ってきたけど、みどりは抱きしめられたことがなかったんだな…と。それを頭で想像できても、体感でどういう感じなのか? すごく難しかったです。

実は、先ほど有村さんがおっしゃっていたドキュメンタリー映画を私もたまたま観たんです。監督やスタッフさんからではなく、友達から「面白いよ」と言われて観たら、まさに同じテーマを扱っていてびっくりしました。その映画の中で、まさに近い言葉をおっしゃっている方がいて、それを見て、震えたというか、自分の中で納得がいったんですね。罪を犯してしまったけど、なんでそうなってしまったのか? という根本を辿ると、子どもの頃の「愛されたかった」とか「抱きしめてほしかった」という、すごく繊細な、ある種小さなことが、どんどんねじ曲がってしまったりして、苦しみのスパイラルに入ってしまったんだということに気づいて、その映画を観た後にあのシーンの撮影があって、すごく強い気持ちで臨めました。

もうひとつ、佳代ちゃんを抱きしめるシーンは、もうそれしかできないって気がしていて、言葉で何を言っても苦しみを救うことできないし、そういう時、近くにその人の肌や温もりを感じるだけで救われることってたくさんあるんだなと感じました。言葉や理屈じゃなく些細なことが大きく作用するんだというのを感じたシーンでした。


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《text:Naoki Kurozu/photo:Maho Korogi》

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