世界的大スター誕生の背景に運命的な巡り合い

――本作の製作過程について教えてください。
全く飽きることがなかったです。これはレアなこと。一回でも数秒でも、もううんざりと感じたことはありませんでした。セリーヌの夫のルネと、彼女の母親についてのとても分厚い本を読んだんですが、それによって彼女に起きたことを多角的に理解できたんです。母親は14人目の子供は作らないでおこうと思ったのに、結局は出産しました。それがセリーヌ。本当なら、この世に存在しなかった子供を産み落としたことにより、その子と特別な絆を感じています。自分の迷いを悔いるような、改悛の思いがそうさせたんじゃないかなと思います。
一方のセリーヌも、もしかしたら生まれてこなかったかも知れないのに、この世に命を与えてくれたことに感謝している。だからこそ、生きることへの前向きなんです。こうして、母と娘の絆が強くなっていたんだと思います。ルネがセリーヌと出会ったのは、大スターに去られてマネージャーとして廃業の危機に直面していた時。彼もまた、彼女と出会ったことで、人生をもう一度やり直すんです。3人が巡り会い、互いを救い合った。望まれていなかった小さな女の子が、世界的大スターになったという運命も素晴らしいですね。
――素晴らしき運命のいたずら、といった感じですね。クリエーションの際に、何か同じような不思議な巡り合わせを感じることはありますか?
もちろんです! この映画がまさにそうです。ひょっとしたら、この作品は実を結ばなかったかも知れないんです。そのぐらい時間がかかりました。4カ国、フランス、スペイン、カナダ、アメリカで撮影もでき、今までの監督作品の中では一番スケールの大きい大作に。にも関わらず、不思議と今まで一番シンプルでした。撮影中も、これまでで最もスムーズでしたし。撮影中も常に喜びと創造性にも溢れていて、チームもまるで子供たちが一緒に遊んでいる、そんな雰囲気がありました。何か問題があっても、頭を抱えて解決方法を探るということではなく、すっと別の良い方法が見つかるというように。とにかく楽しみ尽くした現場でした。

――ポジティブな部分が作品を通して伝わってきます。
喜びが息をしている、そんな映画になったと思います。
――この作品は“ユーモアは強さである”と気づかせてくれました。笑いは、今のような時代には特にとても大切に感じます。あなたにとって、ユーモアとは?
私の人生にとってもユーモアはとても大切なものでした。12歳の時に、私が言ったことやしたことで、家族が初めて一斉に笑ってくれたことがありました。それが人生最初のとても大きな喜びでした。というのも、私の母は少し鬱気味で、家庭の雰囲気が重かったんです。そんな中で、皆を和ませることが私の役割でした。だから、小さいときから笑ってもらうと嬉しいし、笑ってもらうことが私の存在理由でした。ユーモアに溢れたアリーヌは、まさに私なんです。
セリーヌ・ディオンとヴァレリー・ルメルシエ。唯一無二の存在である二人の人生が交差して生まれた愛の物語。終演後の余韻にまでも幸せが満ち溢れている本作を、絢爛豪華なショーを楽しむように、ぜひ大スクリーンで堪能して欲しい。