日本時間6月13日、アメリカ演劇界で最も権威のある祭典「第75回トニー賞授賞式」がニューヨークのラジ オシティ・ミュージックホールで開催され、WOWOW では、世界のトップスターたちの歌とダンスのパフォーマンスを含め、華やかな授賞式の模様を生中継で放送、ライブ配信を行った。
日本のWOWOWのスタジオでは井上芳雄と宮澤エマがナビゲーターを務め、ゲストとして中川晃教、花村想太(Da-iCE)、亀田誠治、そしてミュージカル演出部門でトニー賞に2度ノミネートされた演出家のマイケル・アーデンが出演した。
前回(第74回)の授賞式は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2021年秋にウィンター・ガーデン劇場(ニューヨーク)での実施という変則的な開催となったが、今年は例年通りのスケジュールで開催場所もラジオシティ・ミュージックホールに帰還。今年のアカデミー賞で助演女優賞(『ウエスト・サイド・ストーリー』)に輝き、2018年には「サマー」でトニー賞(ミュージカル助演女優賞)にノミネートされているアリアナ・デボーズが司会を務めた。
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ミュージカル作品賞は、2020年のピュリッツァー賞で戯曲賞を受賞し、最多11部門ノミネートの「ア・ストレンジ・ループ」、ミュージカル・リバイバル作品賞をオリジナル作品から登場人物の性別を一部入れ替えて制作された「カンパニー」が受賞。
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演劇作品賞はアカデミー賞監督のサム・メンデスが演出を務め、リーマン・ブラザーズの誕生からリーマン・ショックによる崩壊までを3人の俳優だけで描いた「リーマン・トリロジー」が受賞。また、演劇リバイバル作品賞は、様々な背景を抱える選手たちが集う野球チームの舞台裏を描いた「テイク・ミー・アウト」が受賞。同作には日本人ピッチャーの役で出演していた日本人俳優ジュリアン・スィーヒも授賞式に出席しており、受賞が決まると関係者と共にステージに上がり、喜びを分かち合っていた。
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授賞式終了後には、ジュリアンからWOWOWに「トニー賞を受賞した作品に日本人役で出演できた事を光栄に思っています」と喜びのコメントも到着している。
司会のアリアナは、オープニングパフォーマンス「This Is Your Round Of Applause」を披露し、会場はスタートから大いに盛り上がり、いきなりスタンディングオベーション。アリアナはコロナ禍から少しずつ賑わいを取り戻しつつある演劇界について「ジェットコースターのようなシーズンであり、バラバラだった2年の時を経て、カンパニーが再会したシーズンでした」と評し、さらに今年のノミネーションについても、劇作家を目指す黒人の青年を描いた作品、登場人物の性別を一部反転させて入れ替えた作品などが注目を集めた。そしてLGBTQ+であることを公表している候補者が増えている点にも触れ「インクルージョン(包括)が進んでいます」とコロナ禍という厳しい状況に見舞われつつも、演劇界が“前進”していることを強調した。
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その後も、ミュージカル作品賞候補となっている作品を中心に次々とパフォーマンスが披露。「ザ・ミュージックマン」からはミュージカル主演男優賞にもノミネートされたヒュー・ジャックマンとミュージカル主演女優賞候補のサットン・フォスターがマーチングバンドを従えて「76 Trombones」を披露し、軽快なステップで会場を沸かせた。
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同じくミュージカル作品賞候補で“キング・オブ・ポップ”マイケル・ジャクソンの半生を描く「MJ」のパフォーマンス紹介では、マイケルの子どもたちであるプリンス・ジャクソンとパリス・ジャクソンがプレゼンターとして登場。
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これがデビュー作となった主演のマイルズ・フロストがマイケルのヒットナンバー「The Way You Make Me Feel」と「Smooth Criminal」のパフォーマンスを披露し、華麗なムーンウォーク &ゼロ・グラヴィティも見せて喝采を浴びた。
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「ウエスト・サイド・ストーリー」「スウィーニー・トッド」、今年の作品賞ノミネート作「カンパニー」などの名作の楽曲や歌詞を手がけ、昨年91歳で惜しまれながら他界した作詞・作曲家スティーヴン・ソンドハイムの追悼パフォーマンスでは、彼の作品に数多く出演してきたバーナデット・ピーターズが『イントゥ・ザ・ウッズ』より「Children Will Listen」を披露。日本のスタジオの井上さんは「染み入るようなソンドハイムの詞とバーナデットの歌声を聞いて...『いなくなっちゃったんだな』というのをしみじみと感じました」と語る。
今年の授賞式のパフォーマンスで一番の歓声を浴びたのが「パラダイス・スクエア」の主演女優で「Let It Burn」を披露したジョアキーナ・カラカンゴ。クライマックスでは涙を流しながら、力強い歌声を響かせる圧巻のパフォーマンスで会場はスタンディングオベーションで彼女を讃えた。
最多受賞は演劇作品賞、演劇演出賞(サム・メンデス)、演劇主演男優賞(サイモン・ラッセル・ビール)、演劇照明デザイン賞、演劇装置デザイン賞の5冠に輝いた「リーマン・トリロジー」。そしてミュージカル装置デザイン賞(バニー・クリスティ)、ミュージカル助演女優賞(パティ・ルポーン)、ミュージカル演出賞(マリアンヌ・エリオット)、ミュージカル助演男優賞(マッド・ドイル)、ミュージカル・リバイバル作品賞と同じく5冠に輝いた「カンパニー」。
演劇主演男優賞は「リーマン・トリロジー」からサイモン・ラッセル・ ビールが受賞。ビールは共演のアダム・ゴドリー、エイドリアン・レスターの存在に触れ「みなさんを代表して、この賞を受け取ります。トロフィーは家に持って帰るけどね(笑)」とユーモアを交えつつ、感謝を口にした。
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マイケル・ジャクソンの半生を描く「MJ」の主演マイルズ・フロストは、高校の学園祭で披露したマイケル・ジャクソンのパフォーマンスがYouTubeで人気を集め、本作への出演が決まったという異色の経歴の持ち主で、本作がプロとして初めての舞台。同じくジャクウェル・スパイヴィー(「ア・ストレンジ・ループ」)もこれがプロとして初のステージであり、共にデビュー作でいきなりトニー賞ノミネートという快挙を成し遂げた。
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同部門には「ザ・ミュージックマン」のヒューもノミネートされており、誰が受賞するか注目を集めたが、圧巻のパフォーマンスを見せたマイルズ・フロストが受賞。壇上でフロストは「ママ、頑張ってここまで来たよ」と自身を育ててくれた母親への感謝を口にし、さらに黒人の子どもたちに向けて「夢は叶うし、僕も応援してる。みんなで支え合っていこう。マイケル・ジャクソンであれば「Heal the world with Love.(愛をもって世界を救おう)」と言ったでしょう」と呼びかけた。「MJ」は同賞に加え、ミュージカル音響デザイン賞、振付賞、ミュージカル照明デザイン賞の計4冠に輝いた。
主な部門受賞結果
★演劇作品賞 「リーマン・トリロジー」
★ミュージカル作品賞 「ア・ストレンジ・ループ」
★演劇リバイバル作品賞 「テイク・ミー・アウト」
★ミュージカル・リバイバル作品賞 「カンパニー」
★演劇演出賞 サム・メンデス「リーマン・トリロジー」
★ミュージカル演出賞 マリアンヌ・エリオット「カンパニー」
★演劇主演男優賞 サイモン・ラッセル・ビール 「リーマン・トリロジー」
★演劇主演女優賞 ディードル・オコンネル「デイナ・H」
★演劇助演男優賞 ジェシー・タイラー・ファーガソン「テイク・ミー・アウト」
★演劇助演女優賞 フィリシア・ラシャド 「スケルトン・クルー」
★ミュージカル主演男優賞 マイルズ・フロスト「MJ」
★ミュージカル主演女優賞 ジョアキーナ・カラカンゴ「パラダイス・スクエア」
★ミュージカル助演男優賞 マット・ドイル「カンパニー」
★ミュージカル助演女優賞 パティ・ルポーン「カンパニー」
★ミュージカル脚本賞 マイケル・R・ジャクソン「ア・ストレンジ・ループ」
「第75回トニー賞授賞式」[字幕版]は6月18日(土)21時~[WOWOWライブ] [WOWOWオンデマンド]にて放送。
「第75回トニー賞授賞式」[同時通訳]は6月18日(土)20時59分までWOWOWオンデマンドにて配信中。