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ゴールデン・グローブ賞授賞式で垣間見えた、映画界の多様性の変化

日本時間の1月11日(水)、アカデミー賞の前哨戦ともいわれるゴールデン・グローブ賞の授賞式が行われた。

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日本時間の1月11日(水)、アカデミー賞の前哨戦ともいわれるゴールデン・グローブ賞の授賞式が行われた。

昨年、黒人会員がいなかったハリウッド外国人記者協会(HFPA)の腐敗と多様性の欠如が指摘され、タレント、メディア、クリエイターがボイコットし、テレビ放送もされなかったゴールデン・グローブ賞が今年は復活。『エルヴィス』のオースティン・バトラーが最優秀主演男優賞(ドラマ部門)を受賞したり、スティーブン・スピルバーグ監督の『フェイブルマンズ』が最優秀作品賞と最優秀監督賞をダブル受賞するなど、話題作の受賞が目白押しだった。

『フェイブルマンズ』のキャスト・監督たち

しかし未だ、映画業界の「多様性」への指摘は後を絶たない。今回司会を務めたジェロッド・カーマイケルは「私がなぜここにいるのか、お話ししましょう。私がここにいるのは、私が黒人だからです」と発言。続けて、「正直に言うと、私は彼らが全く変わっていないことを前提にこの仕事を引き受けたんだ。黒人の新メンバーが6人入ったと聞いたが......めでたいことだ。」「私がここにいるのは、あなたたちのためです。素晴らしいアーティストたちです。ハリウッド外国人記者協会の過去がどうであれ、これは私たちが祝うべき夜であり、この業界にはこのような夜がふさわしいと思うのです」とコメントし、本年のゴールデン・グローブ賞は開幕した。

受賞者の中で話題となったのは、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で最優秀主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞したミシェル・ヨーのスピーチ。スティーブン・スピルバーグ、ロブ・マーシャル、ジェームズ・キャメロンなどの高名な監督と仕事をしながらハリウッドでのキャリアを開花させた彼女は、当初「あなたはマイノリティよ」と言われたことを回顧した。そして、彼女のスピーチ中、切り上げるようにとオーケストラが音楽で合図を始めた際、「静かに。私はあなたを打ち負かすことができる」と、音楽に負けじと力強く印象的なスピーチを続けた。

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』では、もう一人、最優秀助演男優賞として輝いたキー・ホイ・クァンのスピーチが印象的だった。『インディ・ジョーンズ/ 魔宮の伝説』などで子役として活躍したのち、なかなか役をゲットできずに裏方のキャリアを積んでいた彼は、「初めて役者としてのチャンスをくれた人」として、同じ場にいたスピルバーグに涙ながらに感謝を伝えた。ベトナムにルーツを持つ彼は、アジア人、そして子役時代のイメージに打ち勝ち、本作で晴れて表舞台に戻ってきた。

日本でもインド映画史上No. 1の大ヒットを記録したインド映画『RRR』は、最優秀主題歌賞を受賞。これに対し、インドのナレンドラ・モディ首相が「非常に特別な快挙だ!」「この栄誉は、すべてのインド人が非常に誇りに思う」と述べるなど、国を挙げて大きな盛り上がりを見せている。授賞式前日にロサンゼルスのチャイニーズシアターにて行われた監督・キャストらの登壇付きのIMAX特別上映イベントは、98秒でチケットが完売し、「劇場体験の新たな評価基準となる」と絶賛の嵐。「ナートゥ・ナートゥ」のシーンではダンスパーティーとなるなど盛り上がりを見せ、話題となった。2022年6月1日に当初は一夜限りのチャンスとして全米で公開された本作は、現在30週連続でスクリーンで上映されるほど人気は拡大。全世界で1億ドルを大きく超える興行収入を記録する大ヒット作となっている。

チャイニーズシアターでの上映イベントの様子。

功績を讃えるキャロル・バーネット賞を受賞したのはライアン・マーフィー。LGBTQ+ドラマシリーズ「POSE/ポーズ」などを手掛けた彼は、「生き残るためには光を隠さなければならないとよく言われます」「しかし、見ている子供たちのためにも、私の使命は、見えない人、愛されない人を、ポップカルチャーの中で見られなかったヒーローにすることでした」とコメントを残した。

嬉しいニュースが取り上げられる一方で、『ウーマン・トーキング 私たちの選択』が脚本賞と作曲賞にノミネートされたサラ・ポーリー監督は、未だノミネート作品に女性監督の作品が少ないことを指摘。「『Till』や『The Woman King』、『Aftersun』など、数え上げればきりがないほどです。ですから、私にとっては、女性の映画作家が行った素晴らしい仕事について、今夜、一番に考えなければなりません」とコメントした。

今年のゴールデン・グローブ賞は、まさに今までの指摘を受け入れ、多様性を重視して行われた授賞式だった。しかし、まだまだ改善の余地があるとも言える。様々な課題を抱える映画業界だが、少しずつ変化がもたらされているのは確かだ。

Sources:IndieWireVariety

《伊藤万弥乃》

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