ダース・ベイダー亡き後の銀河を舞台にした「スター・ウォーズ:アソーカ」初回2話が、ついにディズニープラスにて配信開始。ダース・ベイダーことアナキン・スカイウォーカーの唯一の弟子にして元ジェダイ、ファンにとっても大好きなキャラクターであるアソーカ・タノを中心にした新たな「スター・ウォーズ」がスタートした。
師と弟子、ジェダイは常に2人一組で行動する
物語の舞台はダース・ベイダーが倒れ、帝国が敗れた後。「マンダロリアン」シリーズとほぼ同時代、『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』~『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の間にあたる。「マンダロリアン」でもそうだったように、一夜ですべてが変わりはしない混乱の時代だ。
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まず、ドラマシリーズで初めて「スター・ウォーズ」映画シリーズではお馴染みのオープニングクロールが登場した。真紅の文字がアソーカ・タノのまだ誰も知らない物語を告げ、銀河にとって新たな脅威となるスローン大提督の捜索が繰り広げられることを説明する。
これが新しい始まり、と考えれば、「過去を予習しなくては」と気負うことなく(過去シリーズを観たことがあるなら記憶をたぐり寄せながら)、物語で起きていることをそのまま受けとめながら観ることができるだろう。ちなみにスローン大提督とは、アニメシリーズ「スター・ウォーズ 反乱者たち」のラスボス的存在である帝国の将校だが、本シリーズ中でもその力が判明していくはずだ。
第1話「師と弟子」冒頭から、レイ・スティーブンソン演じるベイラン・スコールとその弟子シン・ハティが『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』のダースモールのごとく謎めいて登場。ベイランは『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の無双ベイダーを彷彿とさせるような圧倒的強さを見せ、かつてアソーカが「マンダロリアン」の「チャプター13:ジェダイ」(S2・5話)で捕らえたモーガン・エルズベスを脱出させる。オレンジ色のライトセイバーを持つ2人は、確かに“ジェダイではない”。
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レイ・スティーブンソンは最近ではインド映画『RRR』のスコット・バクストン総督役や、『マイティ・ソー』シリーズのヴォルスタッグ役でも知られているが、今年5月に急逝しており、第1話は「我々の友人レイ」に捧げられている。
一方、ロザリオ・ドーソン演じるアソーカはスローン大提督に辿りつく地図を探すために、いたって落ち着いた様子で惑星ダソミアの遺跡を操作する。そういえば、アソーカがライトセイバーを使って壁や床を丸くくり抜いて侵入する手は昔もよくやっていたような…。
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始まりはスローテンポとも感じるほどだが、アソーカが手に入れた星図の謎を解くために惑星ロザルにいるサビーヌ・レンの知恵を借りようとする辺りからアップテンポなロックとともにワクワクが高まってくる。
惑星ロザルには、帝国に立ち向かった“反乱者たち”を称える記念碑ができていた。いずれも「スター・ウォーズ 反乱者たち」の主要登場人物だが、同作を見ていなくても、“ああ、こうした者たちも(ルークやレイアとは別に)銀河の片隅で戦っていたんだな”ととらえればよいかと思う。
サビーヌは「準備ができた」 アソーカは!?
アソーカと帝国の残党がそれぞれに行方を追うスローン大提督は、実は「反乱者たち」の最終エピソードで、反乱者の中心人物でジェダイのエズラ・ブリッジャー(エマン・エスファンディ)とともにハイパースペースジャンプで未知の領域に飛ばされたきりになっている。エズラを何としても捜し出したいサビーヌは、“マスター”の言いつけを破って、独自に星図を調べようとする。
過去にアナキンという師からも、ジェダイオーダーからも離れたアソーカは、劇中の会話からサビーヌの師という役目も途中で手放したらしい。サビーヌはきっと、難しい弟子だろう。この1~2話を見ただけでも、頑固で気が強く(マンダロリアンだもの)、タフで聡明で自由なアーティストかつ技術者であり、自身の心の声に常に忠実であるキャラクターだと知ることができる(ネイルの剥がれ方がまた最高)。
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こうした特徴はまるでアナキンの弟子だったころのアソーカ、そしてアナキンの弟子時代そのものだ。刺客シン・ハティとのライトセイバーバトルで深手を負い、星図を奪われてしまったサビーヌ。彼女が再び弟子になる可能性について、アソーカはヘラ・シンドゥーラ将軍に「彼女はまだ無理(She's not ready.)」と断言していた。
このセリフで思い出したのは、『エピソード5/帝国の逆襲』で若き(当時まだ青二才の)ルークがヨーダに言った言葉(I am ready.)だ。ヨーダから、準備ができてるって?(Ready,are you?)どこが!? といった言われようで「思慮が足らん」とまで言われてしまったルーク。だが、そのときは必要に迫られていたこともあり、結局ヨーダはルークを鍛えることになった。
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では、今回のサビーヌはどうだろう? 星図に辿りつけば、エズラを捜し出せるだけでなく次なる戦争も防げるかもしれない。第2話「苦労と苦悩」では髪をばっさりと切り、マンダロリアンのアーマーを久々に身につけたサビーヌは「準備ができた」ようだ。今作ではアソーカとサビーヌ、お互いにとって新たな挑戦となる師弟関係を改めて結んでいくことになるのだろう。記憶に新しい“弟子”、強力なフォースを持ちながらジェダイではなく、マンダロリアンの道を選んだグローグーと対になっているようだ。
マンダロリアンの性質とジェダイは相容れないようでいて実は親和性が高いことは「マンダロリアン」シーズン3でも感じたことである。しかも、女性のジェダイの師弟コンビは、初めてではないだろうか。サビーヌを演じるナターシャ・リュー・ボルディッゾの魅力や、孤独に暮らしているサビーヌの癒し、もふもふのロズ=キャットの愛らしさも相まって、これからますます注目を集めそうだ。
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それに、パートナーのオビ=ワン・ケノービ役ユアン・マクレガーとともに「スター・ウォーズ」の一員になった、メアリー・エリザベス・ウィンステッド演じるヘラ・シンドゥーラ将軍も、ドロイドの実写チョッパーも楽しくて、頼もしい。
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ドロイドといえば、クローン戦争のころから若きジェダイたちを見てきたヒュイヤン(本国版の声はデヴィッド・テナント)は、本シリーズでのガイド的存在となるだろう。
さらに、スローン大提督の帰還を望むモーガン・エルズベスを演じる、ブルース・リーを名付け親にもつディアナ・リー・イノサント、新帝国を目論むシス側(!?)の弟子シン・ハティ役のイヴァンナ・ザクノ(『パシフィック・リム:アップライジング』)と、女性たちがこれまで以上に活躍しそうだ。シンとサビーヌの弟子同士の対も大いに気になる。
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個人的には、アニメシリーズの「クローン・ウォーズ」をずっと日本語吹き替えで観ていたこともあって、声優・伊藤静が引き続きアソーカを演じているのは感慨深い。
この「スター・ウォーズ:アソーカ」と「マンダロリアン」「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」の物語は、安心と信頼のデイブ・フィローニ監督・製作総指揮の劇場映画にも繋がっていくという。アソーカの過去となる「クローン・ウォーズ」や「反乱者たち」は後から、もしくは同時並行で追っても構わないと思う。まずは、この新たなる始まりに心踊らせながら次回を待ちたい。
「スター・ウォーズ:アソーカ」は毎週水曜、ディズニープラスにて独占配信中。
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