「スター・ウォーズ:アコライト」の後半、第5話「夜」は本シリーズ屈指のエピソードとなった。
前回の第4話「昼」と双子のように対となり、張られた伏線が生かされ、メイ(アマンドラ・ステンバーグ)を訓練していた仮面のマスターの正体がついに明らかに。“ザ・ストレンジャー”とされる人物との待望のライトセーバーバトルは苦すぎる結末ながらも、見応えのあるものとなった。
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謎のマスター=“ザ・ストレンジャー”はやはり、メイの近くにいて何かと助言をしてきたカイミール(マニー・ハシント)だった。
双子の妹オーシャ(アマンドラの二役)が生きていたことがわかったいま、ジェダイへの復讐どころではなくなったメイが師を裏切り、投降しようとしたところに彼が姿を現した。
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マスター・ソルや、パダワンのジェキら数人を相手にする、残虐にしてルールも秩序もないザ・ストレンジャーとのライトセーバー・アクションは、鬱蒼とした夜のジャングルにそれぞれの光が映え、映像的にも見応え抜群。
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「スター・ウォーズ」のクリシェに縛られない、自由な発想で、新しい異端の物語を描こうとするのが本シリーズの魅力で、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』がそうだったように、既知の見慣れた世界からはみ出した、別の可能性を感じさせる設定や展開があるとバックラッシュに遭うもの。その勇気をリスペクトしているが、やはり、こうしたジェダイ対シスの激闘には否応なしにテンションが上がってしまうのがファンの性(さが)…。
マスターとパダワンがペアとなり、黒ずくめの、しかも分離するタイプのライトセーバーを扱う“シス”とバトルする姿は、『スター・ウォーズ/ファントム・メナス』(エピソード1)のクワイ=ガン・ジン&オビ=ワン・ケノービVS.ダース・モールのようで心が躍った。
ジェキもなかなかに優れたパダワンで、動きがよく二刀流も披露していたが、ザ・ストレンジャーの力がもちろんそれを上回る。演じるダフネ・キーンのアクションが見事で、もっと見たかったパダワンだったのに残念である。
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また、〈ジェダイ全盛の時代〉のお手本となるようなジェダイ・ナイト、ヨード・ファンダー(チャーリー・バーネット)までも倒されてしまったので肩を落としているファンは多いだろう。
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規則、教え、掟。さまざまな言い方をされてきたが、ジェダイには厳格なまでの約束ごと、決まりごとが多い。だからこそ高潔であり、物事を公平に見つめ、持てる力を存分に発揮できるのだとは思う。
このころのジェダイは向かうところ敵なしで、銀河中の悪事を取り締まり、ならず者たちを一掃していたはず。加えて、有望なパダワンになれそうな幼い子どもたちを家族から引き離し、修行として庇護してきた。そうした圧倒的な権力ゆえに、見方によっては侵略者や破壊者のように映った場合もあったのかもしれない。メイや、もしかしたらカイミールもその“犠牲者”だったのかも…!?
自由でありたい、自分の力をもっと示してみたいとする彼の心理に同情する余地はあり、その佇まいをクールとさえ思ってしまうことも事実。
そして、次々に仲間を失って激昂し、ザ・ストレンジャーに感情のままに向かっていくソルはジェダイ・マスターらしからぬ姿でもあった。これまでも垣間見せてきたが、ジェダイ・マスターとはいえ、これほどの(一時のアナキンを彷彿とさせるような)怒りや憎しみを表出させる姿には何らかの意味があるのではないか。16年前の出来事なのか過去について何やら秘密もあるらしく、ソルからは葛藤を抱えた様子も見てとれる。
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普段は冷静で穏やかでも、感情が大きく揺れ動いたときの熱量を持った演技は韓国俳優イ・ジョンジェならでは。イ・ジョンジェとマニー・ハシントのアジア系俳優の対決をはじめ、多様な人種でのライトセーバー・アクションにも拍手を送るべきだろう。
そんなマスター・ソルはオーシャと秘かに入れ替わったメイを連れ帰り、ザ・ストレンジャーはオーシャを連れ去ることになった。
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『エピソード5/帝国の逆襲』でルークがレイアを呼んだように、メイがオーシャに助けを呼びかけたことがきっかけである。双子と聞いてどこかでそのオマージュを期待していたのも、「スター・ウォーズ」ファンとして面倒くさいところではあるのだ。
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