※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

【映画と仕事 vol.27】 キングギドラ、モスラをつくった怪獣造形師・村瀬継蔵が胸にとどめる円谷英二の金言

『ゴジラ』シリーズをはじめ数多くの怪獣映画で特殊造形を担ってきた怪獣造形師・村瀬継蔵が88歳にして監督に初挑戦! これまでの歩みを振り返ると映画『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』への思いを語ってくれた。

最新ニュース インタビュー
注目記事
『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』村瀬継蔵総監督
『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』村瀬継蔵総監督 全 8 枚
拡大写真

60年以上を経て再び撮影したヤマタノオロチのシーン


――本作『映画『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』では怪獣ヤマタノオロチが出てきますが、ヤマタノオロチと言えば村瀬さんも参加された『日本誕生』(1959年/監督:稲垣浩/特技監督:円谷英二)に登場する八岐大蛇が印象的です。

村瀬:あの映画では三船敏郎さんが須佐之男命(スサノオノミコト)を演じていて、八岐大蛇の上に乗って、剣を突き刺すというシーンがありました。でも、ただ刺すだけじゃおもしろくない。じゃあ、(刺したところから)何か吹き出す仕掛けにしようか? 金粉なんてどうですか? と言ったら、おやじさん(=円谷さん)は「いや、金粉じゃ生き物じゃないよ」という話になって、いろいろ工夫して、刺されたらパーッと血と金粉が吹くようなカットができまして、おやじさんも「これはおもしろい」と。

八岐大蛇のボディは直径1メートル50~60センチくらいあったかな? 三船さんがそこに乗っかって、剣を刺すんですけど、八岐大蛇の首や体をうまく動かす方法がないか? という話になりまして。操演技師の中代文雄さんという方がおられたんですけど、相談したら「ピアノ線で上から吊って動かそうか?」という話になって、テストして、それでOKになりました。みなさん、僕が八岐大蛇を造ったと褒めてくださるんですけど、決してそうじゃなく、裏には操演技術や円谷さんのアイディアとか、いろんなものが合わさって、ああいう動きの八岐大蛇ができたわけです。

八岐大蛇が酒を飲むシーンも、中代さんが「大きな桶に首を突っ込ませると、飲んでいる感じがよく出るんじゃないか?」と提案して、あのカットができたんです。

――60年以上を経て、今度はご自身が総監督という立場で、ふたたびヤマタノオロチのシーンを撮影されていかがでしたか?

村瀬:佐藤(大介/プロデューサー・特撮監督)くんに「昔の八岐大蛇はこんな感じだったよ」という話をして、佐藤くんからも「じゃあ今回はこんなのはどうですか?」という話をしてもらって撮ったんですけど、すごく良いものが撮れたと思います。

――(インタビューに同席した佐藤氏に)実際、撮影されていかがでしたか? 『日本誕生』の八岐大蛇の動きを参考にされた部分などはあったんでしょうか?

佐藤プロデューサー:『日本誕生』はもちろん資料として観ました。八岐大蛇はワイヤーで吊って首を操作した日本最初期の怪獣なんですよね。そういう意味で、まだまだ技術的には洗練されていない部分もあったんですけど、その後のキングギドラ(1964年公開の『三大怪獣 地球最大の決戦』で登場)では技術的な部分がかなり向上しているので、そちらを参考にさせていただいた部分はありましたね。

村瀬:キングギドラの首の動きは八岐大蛇をアレンジしてつくったんです。そこでも中代さんのアイディアが活きたし、(特殊技術の)撮影の有川貞昌さんのやり方もうまくいったと思います。ぬらぬらと首が動く感じがすごく上手に撮れたと思います。

――もうひとつ、『カミノフデ』の中で、怪獣造形師だったヒロインの祖父が、ある撮影でスーツアクターも務めて、火だるまになってビルから落ちるカットの撮影に参加したというエピソードが明かされますが、これも村瀬さんご自身が実際に経験されたことですよね?

村瀬:あれは香港の『北京原人の逆襲』(1977)の時の話ですね。北京原人のスーツアクターがいなくて、スタントマンに「君が火だるまになって落ちてくれ」と言ったら「保険をかけてくれればやりますけど、保険がないなら火をつけてビルから落ちるなんてできません」と言われまして。

そうしたら(特殊効果の)久米攻さんが「じゃあ、村瀬さん燃やしちゃおう」って言いまして…(笑)。それを聞いて「私を燃やしちゃう…?」って思ったけど、やっぱり造った自分がどこまで燃えても大丈夫かとか一番わかっているからね。もう、こうなるとしょうがないですよね。「じゃあ僕が入ります」と。

撮影の有川さんが「北京原人の皮は何枚ある? 最低3カットはあるからね」と聞くので「1カットで撮っちゃえばいいんじゃないですか?」「いや、3カットはほしい」って(笑)。結局、3カットで3枚の皮膚は全部使っちゃいました。

(製作のショウブラザーズ社長の)ランラン・ショウがラッシュ映像を見て「これは保険もなしに誰が火だるまになったの?」と驚いていて、「村瀬さんが自分でやったんです」と説明したら「いやぁ、すごい人だな」と言って、ランラン・ショウはその後、僕に金時計を贈ってくれました。自分で造って、自分で入って、燃やして、こんな立派なものをもらっちゃって良いのかなって思いましたけど(笑)。

撮影そのものは自分ではあんまり危険を感じることもなかったんですけど、久米さんが火をつけて落ちて…だいたい1カットで4~5秒かな? 有川さんが「いやぁ、村ちゃんだからやってくれたんだなぁ」と言ってたけど「いやいや、やらされたんだよ!」って(笑)。あれは本当にラストカットの大事なシーンでしたからね。やってよかったなと思いました。


  1. «
  2. 1
  3. 2
  4. 3
  5. 続きを読む

《photo / text:Naoki Kurozu》

特集

関連記事

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]