マーベルの新ドラマシリーズ「アガサ・オール・アロング」第6話「使い魔たずさえ」は、当初から少年(ティーン)とだけ呼ばれていたジョー・ロック演じるキャラクターの背景や、アガサ・ハークネスの前に現れ“魔女の道”を目指すよう促した理由に迫る種明かし的なエピソードとなった。
改めて本作がMCUの一角、「ワンダヴィジョン」のスピンオフであることをまざまざと見せつけられ、もう登場はないかなと思っていた懐かしい“あの人”が姿を現す嬉しいサプライズもあった。
前回第5話のラストで、衝撃的に明かされた少年の正体――それはワンダ・マキシモフのパワーを受け継いだ息子、ビリー・マキシモフだった。母親のように他人の思考を操作するというより、他人の思考や強い感情を意図せず読み取ってしまうらしい。
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だが、幾つかの重要な疑問が残されたままだ。ビリーは、「ワンダヴィジョン」最終話でワンダがアガサに勝利し、<ヘックス>(ウエストビューを町ごと覆っていたワンダが作り出したエネルギーフィールド)を閉じた際に、もう1人の双子トミーとともに跡形もなく消え去ったはず。
それがなぜ、アガサの前に現れたのか? トミーは一体どこにいるのか? ビリーが正体を明かさないよう封印の魔法シジルをかけたのは誰なのか? ビリーの視点から第1話に至るまでの物語が描かれることで、そういった謎の答えが1つ1つ明かされていく。
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思えば「ワンダヴィジョン」にも別の視点から物語を描き直したり、過去の出来事に立ち返ったりするエピソードがあった。
第4話「番組を中断します」では、“シットコム”はワンダがウエストビューの住民たちを登場人物に現実を作り変えていたものであることが判明し、第8話「前回までは」では、アガサ・ハークネス(キャスリン・ハーン)の魔女裁判や、ワンダがアベンジャーズと出会う以前の過去とシットコムを愛した哀しい理由も明かされた。
本作のビリーといえば、元の身体はイーストビューに住むユダヤ系の少年ウィリアム・カプランだった。コミックで“ウィッカン”というヒーローになるキャラクターである。混乱の中で事故死したウィリアムの肉体に、ビリーの意識というのか魂が憑依して、転生したようだ。
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また、ビリーにシジルをかけたのは、“道”で「誰かがシジルをかけてる」と言った張本人、占いの魔女リリア(パティ・ルポーン)だったことが分かる。何かよからぬ未来を覗き見たらしい。
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彼女の占いテントを、「決してひとりでは見ないでください」のキャッチコピーが付けられた『サスぺリア』で知られる「(初期の)ダリオ・アルジェント監督ぽくて好き」と話したウィリアム。彼の部屋を見ると、もともと“魔女”やダークな世界に関心があった様子だ。
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やがて、ウエストビューであのとき何が起こっていたかをよく知る人物から情報提供を受けるビリー。“殺人鬼”のような怪しげな佇まいで現れたのは、もしかして…? と思った通り!
「ワンダヴィジョン」でアガサによってワンダの亡き弟ピエトロの偽者(ニセトロと呼ばれた)に扮するよう仕向けられた、エヴァン・ピーターズ演じる売れない役者ラルフ・ボーナーだ! ワンダとアガサのせいで相当なトラウマを抱えている。
「X-MEN」シリーズのピエトロ/クイックシルバーとしてお馴染みで、物議を醸した実在の連続殺人鬼ジェフリー・ダーマー役も記憶に新しいピーターズ。ビリーとエディ(マイルズ・グティエレス・ライリー)が密会する相手としては不穏すぎた。
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そして「魔女の道のバラッド」ローナ・ウー&「コーラル・ショア」によるバージョンが流れるなか、すべてがアガサへと繋がっていく場面も見応えがあるものだった。
ダークかつコミカルに、ファンタジックかつドラマティックにミステリーの緊張感を保ちながら、「HEARTSTOPPER ハートストッパー」のような雰囲気も盛り込みつつ視聴者を引き込む、「ウェンズデー」などのガンディア・モンテーロ監督ら製作陣の手腕には翻弄されっぱなし。
ビリーを演じるジョー・ロックは、ウィリアムと、両親の前でウィリアムになりきるビリー、アガサの前での純朴な“少年”、正体を見せたビリーを繊細に演じ分け、今回はほぼ独壇場。アガサ役キャスリン・ハーンの豹変演技は相変わらず見事だ。
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さて、開き直ったアガサとビリーによる魔女の道の冒険は、あと3話でどこへ向かうのか。
アガサに言わせれば、生き延びるためにカラの器(体)に飛び込んだビリーは、掟破りであろうとも「特別」であり「立派な魔法使い」。そう言われてビリーのプライドが微かにくすぐられた様子も見てとれ、アガサがメンターのようになっている!? いや、そもそも“使い魔”はどっちだ!?
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“緑の魔女”リオ(オーブリー・プラザ)が終始不在なのも、いい予感はしない。
「アガサ・オール・アロング」は毎週木曜日ディズニープラスにて独占配信中。
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