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【レビュー】新時代の『白雪姫』が世界に届けるメッセージに共感

ファンタジー・ミュージカル『白雪姫』が公開。真の“ディズニー・クラシック”として愛され続ける88年前の作品を、新時代のキャスト、スタッフを迎えて再構築。“雪のように純粋な心”を持つディズニープリンセスは、いま世界中に最も必要なものを届けようとしている。

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『白雪姫』(c) 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
『白雪姫』(c) 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. 全 7 枚
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『美女と野獣』『アラジン』『リトル・マーメイド』といったディズニー名作アニメーションの実写版を次々大ヒットさせてきたディズニー。

ディズニー初の長編映画であり、世界初のカラー長編アニメーションである名作を実写化したファンタジー・ミュージカル『白雪姫』が現在公開中だ。

真の“ディズニー・クラシック”として愛され続ける88年前の作品を、新時代のキャスト、スタッフを迎えて再構築。“雪のように純粋な心”を持つディズニープリンセスは、いま世界中に最も必要なものを届けようとしている。


沁みるラブソングも!キャラクターと
リンクする魅力的な新曲


『白雪姫』といえば、“ディズニー・ヴィランズ”の代表格ともいえる女王が、魔法の鏡に「世界で一番美しいのは誰?」と問う場面が象徴的だろう。

鏡の答えに、怒りと嫉妬にかられた女王は白雪姫の命を奪うよう兵士に命令するが、兵士はそんなことなどできず森の奥へ白雪姫を逃すと、動物たちに導かれた白雪姫が7人のこびとたちと出会う。やがて白雪姫が生きていると知った女王は老婆の姿で毒リンゴを手に白雪姫の前に現れ、毒リンゴを食べた白雪姫は永遠の眠りについてしまう…というストーリーでお馴染みだ。

今回実写化された『白雪姫』では、基盤の筋書きは概ねそのままに、めくるめく映像美と『ラ・ラ・ランド』『グレイテスト・ショーマン』『アラジン』の作曲家パセク&ポールが手掛けた新曲が、ここぞ! というシーンでキャラクターの心情にリンクしていく。

まずオープニングから希望に満ちた王国を舞台に、繰り返される壮大なメロディと華やかな群舞の「愛のある場所」で幕を開ける。

他者を思いやり、土地の実りを分かち合うリーダーである王のもとで育った白雪姫は人々に愛されていた。たくさん実ったリンゴで作る“アップルパイ”は、人々に分け隔てなくシェアする愛や優しさを象徴するものとなっている。

また、『ワンダーウーマン』で知られるガル・ガドットが演じる女王はアカデミー賞常連の衣装デザイナー、サンディ・パウエルによる衣装の荘厳さもあいまって、歌い上げる「美しさがすべて」も鳥肌ものの迫力。プレミアム吹替版の月城かなとの歌声と演技も圧倒的である。

だが、外見の美しさと権力に執着する邪悪な女王によって王国は一変し、いつしか人々からは希望が消え、城の召使いとなった白雪姫自身もかつての自分が夢に見ていた未来、「恐れ知らずで公平で、勇敢で誠実」な誇れる自分を見失ってしまう。

そんなときに白雪姫が出会うのが、飢えた人々のために食料を手に入れようと城に忍び込んだ青年ジョナサンだ。彼は王子ではない。いうなれば、女王の圧政に抵抗し、仲間たちと戦っている“レジスタンス”(反乱者)である。

白雪姫が城の外の世界に再び目を見開くきっかけをくれた、志あるポジティブな青年ジョナサンと恋に落ちるのは必然だった。この運命の出会いが、白雪姫に自分自身を思い出させることにもなった。

新曲はいずれも素晴らしいが、白雪姫とジョナサンが互いに信じ合うことを歌う「二人ならきっと」には特に心動かされた。

プレミアム吹替版では白雪姫役の吉柳咲良がドラマ「御上先生」の役柄を忘れさせるほどの豊かな表現力を見せ、また、ジョナサン役で声優に初挑戦した河野純喜(JO1)はグループではパワーボーカリストの印象があるものの、繊細な感情を込めて歌い上げている。


愛と思いやりの伝播を…
“原点回帰”のメッセージ


本作の魔法の鏡は女王に向かい、“あなたは確かに外見は美しいが、誰よりも心が美しいのは白雪姫だ”と言う。

純粋で屈託なく、素直で誰にでも親切な白雪姫。そのキャラクターは白雪姫が長きにわたって支持されてきた理由でもある。さらに本作では、自分自身に向き合い、誠実であろうとする勇気の持ち主でもあることにも焦点が当てられている。

その真っ直ぐさに答えようと、周囲もまた自分らしくありたいと思えるようになる。白雪姫が“夢に見た”ことのために立ち上がることができたのは、人々との信頼関係と連帯があればこそ。

本作の最も肝心な部分は、白雪姫が想い人のキスで目覚める、その後からなのだ。

いま、世界のあらゆるコミュニティで必要とされているのは、この白雪姫が持つ誠実さであり、善意であり、愛や思いやりだ。無関心や想像力の欠如、悪意やヘイトでなく、いまこそ心をオープンにして広めるべきものだ。

映画を観れば、わかる。激しい吹雪の夜を乗り越えて生き抜いた、“雪のように純粋な心”を持った白雪姫を抜群の表現力と歌唱力で体現するレイチェル・ゼグラーはハマり役だった。

願いを持つ主人公が邪悪な統治者と対峙し、連帯によって国を取り戻すという点では、ディズニー100周年記念のドラマティック・ミュージカル『ウィッシュ』とも相通じるものがある。

実写『白雪姫』で描かれるメッセージはまさにいまだからこそ、クラシックなディズニーへの原点回帰に思える。

『白雪姫』は全国にて公開中。


《上原礼子》

「好き」が増え続けるライター 上原礼子

出版社、編集プロダクションにて情報誌・女性誌ほか、看護専門誌の映画欄を長年担当。海外ドラマ・韓国ドラマ・K-POPなどにもハマり、ご縁あって「好き」を書くことに。ポン・ジュノ監督の言葉どおり「字幕の1インチ」を超えていくことが楽しい。保護猫の執事。LGBTQ+ Ally。レイア姫は永遠の心のヒーロー。

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