まさに「全員野球」で挑んだ作品
――おっしゃるように、エンタメ性や娯楽性も高ければ、タゴサクに突き付けられるシリアスな要素もあり、一括りには表せられない魅力の詰まった作品です。完成作を観て、どのような気持ちになりましたか?
佐藤:とにかく、良かった!何より原作がね、ものすごい面白いんですよ。
山田:本当に面白いです。
佐藤:ある意味、暴力的なぐらい面白いんです。だからこそ、俺らが映画にしたときに面白さのスケールが小さくなってほしくない、と思っていて。…でもね、観ている途中から俺はうれしくてしょうがなくなったんです。面白さがエスカレートしていくし、突きつけられたり、切なくなったり、ちょっと泣きそうになったりもする。「これは面白いわ!!」と本当に自信を持って言えると思いました。
原作のものすごい面白さに見合う作品が、みんなの力でできました。永井監督、裕貴をはじめとした俳優陣、ここ(チラシ)に名前がない俳優陣、さらにエキストラの方も含め、「取り逃がすまい」という気迫みたいなものがあったんです。

山田:僕も二朗さんと全く同じ気持ちです。まずお話をいただいて原作を読んで、あまりに面白すぎて。映画化するにあたって、「これ、前後編ですよね? 2本やるんですよね?」と聞きました。「1本で」と答えが返ってきたとき、言葉を選ばなければ…「ふざけるな」と思ったんです。
佐藤:(笑)。
山田:責めているわけじゃなくて(笑)! これを1本でやろうなんて本当に大丈夫なのか、と。原作では呉(勝浩)先生からのタゴサクへの愛情、類家への愛情、もちろんほかのキャラクターへの愛情が、めちゃくちゃ感じられたので。人間ドラマとして、こんなにも緻密にキャラクターがブレることもなく描かれていて、物語も結末まで持っていけるのか。完璧なお話がそこにあったから、2時間超でやるのは…。

――まったく想像がつかなかった、と。
山田:本当に、そうなんです。さらには「何で…頭からいるの? やめてくれよ!」みたいな(苦笑)。もちろん映画は総合芸術なんですけど、僕はありえないプレッシャーの中、「うわぁ。もう撮影きちゃったよ!」と思っていました。しかも、"化け物"が目の前にいるんですよ。
佐藤:ふふふ。
山田:本当に素晴らしいお芝居をされる二朗さんがいて、皆さんがいて。ビビりながら「いや、でもなんとか俺頑張れ…!」という思いで日々立ち向かっていました。本当に個人的な話なんですけど、『木の上の軍隊』の撮影が終わった後すぐに『爆弾』に入って、その後『ベートーヴェン捏造』の撮影だったんです。準備期間が少なくて「ありえないんだけど!」と(笑)。

――今年公開の山田さんの主演作3本ですね!
山田:「この5ヶ月という短い期間で3作品の撮影をこなせたら、天才の所業でしかないぞ!?」と思っていました(笑)。そんな自分のことはさておき、先ほど二朗さんがおっしゃった通り、監督もスタッフさんもエキストラさん含め、本当に素晴らしかった。だからこそ、全力でおすすめできる作品が完成したと思えました。何回も言ってしまうけれど、本当に自分の力じゃなくて、皆さんのおかげで。
監督、スタッフさん、キャストをはじめ、みんなでこのタゴサクという化け物に対して立ち向かっていった作品なんです。だから撮影の途中で、「これ全員野球じゃん」とも思っていました。みんなが打って、みんなで守って、甲子園を見ているような感覚とでもいうか。

佐藤:あるある、俺も思った。言うならば、これは一人のおじさん(タゴサク)VS警察の話じゃないですか。(劇中で)渡部篤郎さんが言っていた通り、「例えるなら、みんな決勝戦の最後の大事な試合を戦っている」感じだった。本当に刑事さんたちみんな、すごーく色気があったんだよね。それは何が何でも仲間を守らなきゃいけないということもそうだし、何が何でも罪のない人間を守らなきゃいけない、そうでないと死ぬわけだから。そのちょっと悲壮なまでの覚悟を感じて、泣けてしまうくらいにものすごく伝わって。本当に皆さんが素晴らしいと思います。

