「第17回TAMA映画賞」授賞式が11月15日（土）、パルテノン多摩 大ホールにて行われ、最優秀男優賞と最優秀女優賞が発表された。最優秀男優賞には、長塚京三と吉沢亮が、最優秀女優賞には、瀧内公美と広瀬すずが受賞した。
「TAMA映画賞」は東京都多摩市および近郊の市民からなる実行委員が、「明日への元気を与えてくれる・夢をみさせてくれる活力溢れる＜いきのいい＞作品・監督・俳優」を、映画ファンの立場から感謝をこめて表彰する授賞式。対象作品は2024年10月～2025年9月に一般劇場で公開されたものからの選出となる。
長塚は『敵』での受賞となった。長塚は原作、吉田大八監督のシナリオをべた簿めした後に「おぜん立ての上に、ちゃっかり載せていただいて僕がキャスティングされました。一番後からやってきて一番目立つおいしいところをかっさらって大変心苦しいのですが、監督はじめ、スタッフのおかげかと。彼らと一緒にこの賞をいただきます。ありがとうございました」と受賞の喜びを語った。
俳優生活も50年をすぎたというベテランの長塚だが、今後の仕事についても「立派な賞をいただく節目は何を意味しているのか、もうこつこついいんじゃないかなとか、いろいろ思います。だけど、もう少しここにいて、もう少しましな役者になりたい気持ちが捨てがたい。ちゃんと生きるということは、その辺しか僕にはアプローチできないと思う。もう少しこちらの世界で頑張りたいと思います」とまだまだ現役を宣言し、会場は万雷の拍手だった。
同賞に『国宝』、『ババンババンバンバンパイア』で受賞となった吉沢は、本賞としては初の2年連続での受賞となった。演じた喜久雄という役に触れ「なかなかハードな3か月間の撮影でしたが、皆様とともに乗り越えて今たくさんの素晴らしい景色を観させていただいている日々です。これからも素敵な賞に恥じぬよう精進してまいります」とコメントする。演目については、実際使うシーンだけでなく最初～最後まで演じたそうで「稽古をしましたし、撮影でも録りましたが、使われているのはあれくらい…」と場内の笑いを誘いながらも「そうだろうなと思っていたんですけど、非常にもったいないなと！」と笑顔を見せると、観客からも「素敵だった」意味での拍手が送られた。
喜久雄の演技は、横浜流星演じる俊介の存在なしに語れない点も多々ある。横浜とのセッションについて、吉沢は「彼のつま先から髪の毛1本まで歌舞伎役者になってやるという気概、本当にストイックな姿を隣で見ていたので、僕としても励みになりました。1年半稽古していると心が折れる瞬間も結構あったのですが、彼の姿を見て自分自身も奮い立たせてもらってやれた。しゅんぼうをやってくれて感謝しています」と惜しみない賛辞と劇中の呼び名を含め愛情をにじませた。
一方、『レイブンズ』、『敵』、『奇麗な、悪』、『ゆきてかへらぬ』、『国宝』、『ふつうの子ども』、『宝島』と7作品（！）での選出となった瀧内からは、出演舞台の初日とかぶったためビデオメッセージが寄せられた。「多摩市民さん手作りの映画祭で賞をいただけるのは、すごく励みで、うれしく思っております。今年は7作公開されました。1作品1作品すごく大切にしてきた作品です。映画を表現活動の主軸で生きてきた私には非常に励みになります。これからもスクリーンで皆様とお会いできたら幸いです」と、笑顔で感謝を告げていた。
同じく、『遠い山なみの光』、『アット・ザ・ベンチ』、『ゆきてかへらぬ』、『片思い世界』、『宝島』で最優秀女優賞を受賞したのは、広瀬。『遠い山なみの光』で演じた悦子について、広瀬は「この作品の女性という立場、存在が人それぞれ違う色に見えて、悦子さんの独特の景色の見え方がなかなかつかめずでした。つかむまで時間がかかる、覚悟のいる役でしたが、時代が進む中で当時の女性を演じられるのはすごく貴重で勉強になりました」と充実の表情を浮かべる。
本年は特に、テーマ、作風も異なる作品に出演し広瀬は多彩な魅力を放った。「今年は本当にたくさんの作品を皆様に届けることができたと、自分でも思える年でした。時代ものが多かったので、大正時代から戦後から現代まで、どの時代も深かったです。なかなか手触りがない中進むこともあったんですが、役者人生ではとても濃厚な年でした」と、実感を語っていた。
