『女王陛下のお気に入り』で人間存在の真実をあぶり出し、『哀れなるものたち』で世界を魅了したヨルゴス・ランティモス監督の最新映画『ブゴニア』のメイキング映像が公開された。
本作は、ヨルゴス・ランティモス監督と『ミッド・サマー』のアリ・アスター、『パラサイト 半地下の家族』製作陣がタッグを組んで生み出した、前代未聞の誘拐サスペンス。

ヨルゴス・ランティモス監督作品を語る上で外せないのが、美しい不協和音を奏でる<音楽>の存在だ。本作では、本年度のアカデミー賞にて作品賞、主演女優賞(エマ・ストーン)、脚本賞に並び、作曲賞にノミネートもされている。
この度解禁されたのは、その音楽づくりの裏側を捉えたメイキング映像だ。本作の音楽を手掛けるのは、『哀れなるものたち』『憐れみの3章』に続いて監督作品に携わり、監督が「得難い協力者」と絶大な信頼を寄せるイェルスキン・フェンドリックス。
映像の冒頭、彼の口からは、「ヨルゴスは作曲着手前に映画を見せてくれない。そして今回は僕に脚本も読ませないと言うんだ」という耳を疑う衝撃の事実が飛び出す。そして、監督から与えられたヒントは、「蜂」「地下」「宇宙船」というわずか3つのキーワードのみで、映像も物語の全貌も一切知らないまま、イメージのみから曲を構築したのだという。

このほかに例を見ない作曲方法についてイェルスキンは、「僕が一連の楽曲を渡すと、彼は奇想天外な場面で使う。大抵僕には予測不能な脚本のパートなんだ。彼が型破りな視点で音楽を活用してくれるから僕は自由に作曲できる」と、それでこそ生まれる音楽の魅力を語る。作曲家自身も予想し得ないタイミングで、映像と音が激しく衝突し、未知の化学反応が引き起こされるのだ。

さらに、本作の音楽に大きく反映されているのが、陰謀論者で誘拐犯のテディ(ジェシー・プレモンス)のキャラクター性だという。イェルスキンはテディという男について、「多くの部分が、とても若々しいんだ。とても激しく、とても苦しげで、やかましくて過激だ。それが、映画全体でのテディの特徴でもある。彼は全てにおいて確信を持っていて、世界を救おうとしている。でも同時に、すごく怒りを抱えていて、自分の感情をうまく抑制できない。この映画の音楽はそういうところを反映している。とても過激で十代の若者みたいなんだ」と分析。この狂気に満ちた音楽が、歪な誘拐劇をどのような結末へと導いていくのか? 物語の展開とシンクロする一音一音に大注目だ。

そして、オリジナル曲に加えて監督らしい遊び心と毒のあるメッセージが込められているのが、劇中で強烈なインパクトを残す選曲の数々。物語の前半、ミシェルが退勤する車内で爆音で流れ、予告編にも使われているのがチャペル・ローンの「Good Luck, Babe!」。アメリカのBillboard Hot 100でトップ5入りを果たしたほか、2024年のベストソングリストにも名を連ねた大ヒット曲だ。社会的な規範に対する皮肉を歌うこの曲が、カリスマCEOであるミシェルを誘拐劇へと誘っていく。

耳を突き刺すような激しいオーケストラサウンドから、現代のポップアイコン、そして時代を超えた反戦歌。物語の全貌を見届けたとき、これらの音楽に秘められた意味も理解することとなる。視覚のみならず、聴覚までもが『ブゴニア』の世界に支配される至高の118分を、ぜひ劇場で堪能してほしい。
『ブゴニア』は全国にて公開中。



