4月14日、初夏のような陽気に包まれた韓国ソウルの光化門で、『ぼーっとする大会』と、4月18日から始まるJTBC新作ドラマ『誰だって無価値な自分と闘っている』(日本ではNetflix配信)のコラボイベントが開催された。主演のク・ギョファンやコ・ユンジョンらも登場し、大きな注目を集めたこの異色イベントをレポートする。
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「何もしない」を可視化する競技×「無価値」を描くドラマの体験型コラボ
『ぼーっとする大会』は2014年に始まり、東京やメルボルン、台北などでも開催されてきた市民参加型イベントで、今年で12年目を迎える。デジタル社会にあふれる情報と刺激にさらされる現代人に向け、「何もしない時間」の価値を問い直す試みとして広がってきた。
今回会場となった光化門広場(六曹広場)は、韓国を代表するランドマークであり、国家行事や大規模イベントも行われる。1カ月前にはBTSのカムバックステージが行われた、まさにそのステージがあった場所だ。そこにヨガマットが敷かれ、参加者は90分間ただ座り、“ぼーっとする状態”を維持する。審査は心拍数の安定度と観客投票で行われ、会話やスマートフォンの使用は禁止、居眠りも失格となる。

今回は『誰だって無価値な自分と闘っている』とのコラボとして実施された。周囲と比べてうまくいかない現実に苦しみながら、自分なりの平穏を探す人物を描く本作のテーマは、大会の趣旨と重なる部分があるという。会場にはドラマの世界観を体験できるブースも設けられ、競技と物語が融合する構成となっていた。
ク・ギョファン&コ・ユンジョンが来場
ドラマの主要キャストたちもそれぞれの形でイベントに参加し、会場の熱気はさらに高まった。チェ・ウォニョンとチョ・ミングクは、一般参加者とともに大会に挑戦。90分間“ぼーっとする”状態に向き合い、作品のテーマである「無価値の価値」を体現。
中でもチェ・ウォニョンは心拍数と観客投票による審査で、堂々の2位に入賞。表彰台では「優勝を目指して準備してきた」とユーモアを交えつつ、「作品のメッセージを自分の体で伝えられたことが意義深い」と語り、大会とドラマのテーマのつながりを印象づけた。
一方、主演のク・ギョファンとコ・ユンジョンは、会場内の体験ゾーンに登場。ク・ギョファン演じる主人公ドンマンの部屋を再現したフォトスポットや、「自分をほめるひと言」を書いて壁に貼る参加型ブースを巡りながら、作品の世界観を伝えた。

これまで日韓の女優を数多く取材してきた筆者だが、今回初めてコ・ユンジョンを直接目にして印象的だったのは、その際立つ透明感だ。ひときわ白い肌が印象的で、思わず「コンジュ/공주」(姫)という言葉が浮かんだ。一方で、その華麗な佇まいには、遠目からでも伝わる芯の強さがうかがえた。今後もどのような役を演じていくのか注目していきたい。
同じく主演のク・ギョファンは、この人にしか出せない独特の雰囲気と声が印象に残る俳優で、現在のソウルの街の広告やCMでは頻繁に目にする存在だ。いわゆる端正なイケメンとは異なるが、作品ごとに強い印象を残し、繰り返し見たくなる中毒性のある俳優である。いまの韓国エンタメを代表する二人がどのようなケミストリーを見せるのか、作品への期待は高まる。

そしてこのイベントで筆者が特に印象に残ったのは、さまざまな煩悩が書かれた短冊から手放したい感情を一つ選び、自らシュレッダーにかける体験コーナーだ。シンプルな仕掛けながら、不思議と気持ちが軽くなる感覚があり、強く記憶に残った。ちなみに筆者が選んだのは「不安」である。

『私のおじさん』脚本家が手掛けるヒューマンストーリー
本作は、成功した友人たちの中で自分だけがうまくいかず、嫉妬や劣等感に追い詰められた人物が「平穏」を模索していく過程を描く。競争社会の中で誰もが抱えうる「無価値感」や「存在不安」に向き合い、「自分は本当に無価値なのか」を問い直していく。
脚本は、人間の奥底にある感情を繊細な言葉で描くことで知られるパク・ヘヨンが務め、演出は平凡な人々の連帯を温かな視点で捉えてきたチャ・ヨンフンだ。代表作には、「人生ドラマ」として挙げる視聴者も多い『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』(2018年・全16話)や、筆者の人生ドラマでもある『また!?オ・ヘヨン ~僕が愛した未来(ジカン)~』(2016年・全18話)などがある。いずれも日常に潜む感情の機微や、生きづらさを丁寧に描いた作品で、本作とも通じるテーマを持つ。
ソウルを訪れた際は、光化門広場に座り、光化門とその背後に広がる北漢山(ブッカンサン)を眺めながら、しばらく何もせず過ごしてみてほしい。北漢山からの風が抜け、景福宮を通って都市へと広がるこの一帯は、都市と自然が調和する象徴的な空間だ。ソウルに住む筆者にとってもいちばん好きな場所で、訪れるたびに思考を静かにリセットできる。ソウルで「立ち止まる時間」を体感できるスポットとしてぜひおすすめしたい。
(文=田名部 知子/Xで気ままなソウルの日常を発信中:@t7joshi)
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