漫画の神様・手塚治虫の創作の原点に迫る、NHKの特集ドラマ「手塚治虫の戦争」が8月に放送決定。制作発表取材会が行われ、手塚治虫を演じる高良健吾と“大寒鉄郎”を演じる原田琥之佑のコメントが到着した。
1970年代の東京、漫画家としてどん底にあった手塚治虫は、自身の戦争体験をもとにした漫画「紙の砦」を描き始める。少年誌の連載は打ち切られ、会社も倒産ーーすべてを失いかけたその時、なぜ手塚は“戦争”を描こうとしたのか。
執筆に挑む1970年代の手塚治虫と、「紙の砦」の主人公で戦時下を生きる彼の分身・大寒鉄郎。漫画を描くことに生を見出した2人の物語が、時代を越えて重なり合うーー。
高良が今作で演じる手塚治虫は、「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」「リボンの騎士」「火の鳥」ーー数々の名作を生み出してきた稀代の漫画家。漫画家生活30年。その名はすでに伝説となりつつあった。......のだが、漫画家人生最大のピンチに直面していた。

一方、原田が演じるのは、手塚治虫が描き始める漫画「紙の砦」の主人公。いつ戦火に巻き込まれるかもわからない時代、漫画を描くことに夢中な16歳の少年は、それでも漫画に向かい続ける。
原田は、2025年映画『海辺へ行く道』の主演に抜擢。直近では、ドラマ「俺たちバッドバーバーズ」、映画『人はなぜラブレターを書くのか』(石井裕也監督)、『君のクイズ』(吉野耕平監督)と話題作に出演し、主演映画『POCA PON ポカポン』ほか複数公開を控えている逸材。「日経エンタテインメント!」2026年の新主役100人の“期待の10代俳優たち”に選ばれている。
5月7日(木)には2人が参加し、宝塚市立手塚治虫記念館で制作発表取材会が実施された。
キャスト、スタッフよりコメント到着

手塚治虫役/高良健吾「皆さんが知らない一面を描けたら」
このドラマでは、手塚治虫先生の「虫プロ」が倒産する、不遇の時代も描かれます。その時代の手塚さんの苦しみは、愛するものを突き詰めるがゆえに生まれてくる苦しみで、その苦しみを乗り越える原動力もまた、 自分が愛する漫画への信念や、闘争心だと思うんです。それを僕はドラマの中で演じ切りたいですし、皆さんが知らない手塚治虫先生の一面を描けたらと思っています。
僕自身もこの作品に携わることで見えてくる、手塚先生のいろんな面にとてもひかれています。役を演じる上で、当時の手塚先生の仕事ぶりと自分を重ねたときに、手塚先生は「漫画の神様」や「天才」と言われていますが、その言葉でまとめてはいけないのではないか、と思うんです。何かと闘う心、常に自分に向いている戦い方に尋常じゃない強さがあって、「これだけできる人っているか?」と僕は感じるんです。手塚先生は手塚治虫先生以外に、誰にも真似できないことをやり続けてきた方なんだと思います。
皆さんにとっても面白いドラマになると思いますので、楽しみにしていてください。
大寒鉄郎役/原田琥之佑「手塚先生のペンの持ち方で絵を描く練習を」
鉄郎はまわりの空気を無理に読もうとしないし、人にこびることのない男子中学生です。でもなぜか人から好かれて、周囲に人が集まる人です。「描きたいから描く」という、理由のない衝動的な漫画欲があり、「ただ自分が満足するために漫画を描く、描いても描いても描き足りない」という、漫画家にとって大切なハング リー精神をもっているところがとても魅力的です。そんな純粋な少年の遊び心を表現出来たら良いなと思っています。
今回のドラマで初めて戦時中を生きる役を演じるので、いまはその時代の人間として生きられるよう、たくさん勉強しています。漫画を描くシーンもあるのですが、手塚先生のペンの持ち方は独特だったそうなので、そのペンの持ち方で絵を描く練習をしたり、手塚先生から生まれるキャラクターは丸から出来ているキャラクターが多いので、丸をたくさん描いています。
僕は三年前に「軍港の子~よこすかクリーニング 1946~」という特集ドラマに出演しましたが、そのときはまだ13歳で、自分が表現したかったことがあまり表現できず、悔しい思いをしました。このドラマで少しでもリベンジできたらなと思っています。
作・桑原亮子
ベレー帽をかぶってニコニコしている、漫画の神様ーー皆さんが『手塚治虫』と聞いて思い浮かべるのは、このような像ではないでしょうか。
けれどもこのドラマは、そんなイメージの奥の、生身の人間・手塚治虫を追いかけます。人知れず悩み、苦しみながら、それでも生涯をかけて漫画で子どもたちを楽しませたいと願った人。その彼が、自身の戦争体験を元に凄絶な漫画を描きました。そこに込められた、時を超えたメッセージを感じ取っていただけると幸いです。
企画・演出/鈴木航
手塚治虫さんの「紙の砦」という短編を知ったのは20年以上前のことです。忘れられない印象的なタイトル、漫画が大好きな少年が見た戦争、それが手塚節のユーモアで描かれますが、ユーモアで包み切れない痛切さが胸に刺さりました。戦争の中でも漫画を描くことを手放さない少年の姿は、決して遠い時代の話ではなく、巨大な暴力の中で私たち一人一人がどうやって正気を保つのか、心に”砦”を築くのかという問いを突きつけてきます。
手塚治虫さんが漫画家人生の苦境の時期に、あえてこの特別な作品を描いたことにも、私は強い意思を感じます。 ご本人にとっても描かなければならなかったテーマなのではないでしょうか。
このドラマは「紙の砦」の執筆に挑む手塚治虫さんの姿と、手塚さんが戦時中の少年少女たちの物語を通じて、描き残したメッセージに迫ります。すばらしい脚本を手に、魅力的なキャストの皆さんと「手塚治虫」という高い山に挑めることをうれしく思います。今も戦争が止むことのない世の中ですが、そんな時だからこそ、多くの方にこのドラマが届くよう力を尽くします。
プロデューサー/田島彰洋
戦後81年。時代がどれだけ進んでも、世界から戦争はなくなっていません。手塚治虫先生が「紙の砦」を描いたのも、遠い国で戦火が続いていた時代でした。
少年時代、大阪で空襲に遭い、その光景を「これは漫画だと思った」と語った言葉に、私は強い衝撃を受けました。現実があまりにも過酷なとき、人はそれを物語として受け止めるしかないのかもしれません。
二度と同じ光景を繰り返してはならない――。子どもたちが大人になったとき、自らの意思で戦争を拒むことができるように。その思いを胸に、手塚先生は漫画を通して戦争と向き合い続けました。
その願いは、終戦ドラマという形でこの作品に向き合う私たちにも重なっています。このドラマが多くの方に届き、戦争が奪ってしまうかけがえのない日常の尊さに、少しでも思いを巡らせるきっかけとなれば幸いです。
特集ドラマ「手塚治虫の戦争」は8月、NHKにて放送予定。


