敗戦の傷が癒えぬ昭和22年。戦死したと伝えられた森乃家うさぎが、顔に包帯を巻き、一切の記憶をなくして帰郷した。彼は戦前、人気、実力共に認められ、将来を約束された落語家だった。その後、記憶は一向に戻る気配はなかったのだが、空ろな口調で呟く話があった。それは、落語“祖忽長屋”であった――。
板尾創路