二階堂ふみ、3作掛け持ちでの撮影の苦労明かすも『ほとりの朔子』は「癒し」
「第35回ナント三大陸映画祭」にてグランプリを受賞した『ほとりの朔子』が1月9日(木)、外国人特派員協会(東京・有楽町)にて上映され、主演の二階堂ふみ、深田晃司監督、そして出演および本作のプロデューサーも務めた杉野希妃が…
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ナント三大陸映画祭では「金の気球賞(グランプリ)」「若い審査員賞」のダブル受賞、第14回タリン・ブラックナイト映画祭では日本人初の「最優秀監督賞」を受賞した本作。受験に失敗し現実逃避中の18歳の少女が、夏の終わりの2週間を過ごす伯母の家での日々が描き出される。
まず、プロデューサーを務めた杉野さんに、日本のインディ映画が抱える宿命である“予算確保”の難しさについて質問が飛んだが、やはり本作も例外ではなかったよう。杉野さんは「日本映画界にもどかしさを感じています」と率直な気持ちを吐露。「意欲的な企画ほど資金集めが難しい。超大作か、もしくは数千万円の予算の作品という二極化が進んでいる」と嘆く。
本作に関しては「深田監督とは2作目ということで。1作目で出資してくださった方々にお話して出資を集めました」と説明。海外の映画祭で注目を集めるような作品ですら、まず製作時点で予算確保の難しさを最大の難関として抱えている現状を改めて浮き彫りにした。
深田監督は本作に限らず常に「特別に海外を意識するわけではなく、自分が面白いと感じるものを作っている」と語り、その上で「自分にとって大事だと思うテーマを選べば、それは自然と普遍的なものになると信じています」とも。
本作に関して、18歳の少女を主人公にした点について「完全な存在ではなく成長、変化していく過程を描いた方が映画は面白い」と説明。「特に今回、バカンス映画を作ろうと思ったんですが、日本にバカンスはないので(笑)、矛盾してる。その矛盾が面白いと思った。日本ではそれを描くとモラトリアムや引きこもり、成長できない大人の話になりがちだが、そこには自分の興味はなかった。二階堂ふみという稀有な女優がいて、18歳の浪人生という期限付きの何でもできるし何もできない時間を描くことができて面白かった」とふり返った。
その二階堂さんはこれまで、三池崇史監督、園子温監督を始め、“鬼才”と呼ばれる監督の下でエキセントリックな役柄を数多くこなしてきたが、今回そうした作品群とは対照的な静かな味わいの作品でこれだけ海外の高い評価を得ることになった。
二階堂さんはまず本作と演じた朔子という役柄について「いままでにないキャラクターであり、作風で、ゆったりした時間が流れ、裏でも表でもない“中間”になっている作品だと思います」と語る。
ちょうど同時期に大河ドラマ「平清盛」と園監督の『地獄でなぜ悪い』の撮影も重なっており「3本同時に掛け持ちは忙しかった」とふり返りつつ、「(他2作で)極端な役を同時にやって戦って、深田監督の現場で癒していたような感じ」と本作の現場に安らぎを得ていたと明かす。「その一つ一つが奇跡として映し出されるのが嬉しく、また監督が大好きなエリック・ロメールのフランスの地で評価されたのは喜ばしいことです」と笑顔を見せていた。
『ほとりの朔子』は1月18日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて公開。
《シネマカフェ編集部》
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