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【MOVIEブログ】2018カンヌ映画祭 Day4

11日、金曜日。6時40分起床、パソコンをチラ見し、食堂でコーヒーを飲みながらサンドイッチを作り、7時半に外へ。本日も爽やかに晴れた朝で、とても気持ちいい。会場に向かいながらサンドイッチを頬張る。

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11日、金曜日。6時40分起床、パソコンをチラ見し、食堂でコーヒーを飲みながらサンドイッチを作り、7時半に外へ。本日も爽やかに晴れた朝で、とても気持ちいい。会場に向かいながらサンドイッチを頬張る。

8時半のコンペからスタートで、待望のパヴェル・パヴリコフスキー監督新作『Cold War』(写真)。1940年代後半から10数年に及ぶ男性音楽家と女性歌手の愛の物語。多くの人の期待を集めたこの新作は、前作『イーダ』のイメージを裏切らない、超絶的に美しい1作だった!

スタンダードサイズにモノクロ映像。84分の作品の全てのシーンが完璧に構築された美しさ。クラシカルなモノクロ映像の伝統を継承する職人技であり、映画における耽美主義のひとつの完成形ではないだろうか。クリシェの固まりだと批判する人に上映後会ったけれども、僕はそうは思わない。極められた様式美にクリシェはない。

映像のみならず、音楽も素晴らしい。映画の冒頭は歌劇団を創設しようとする男女がポーランドの地方でフォークロア音楽を集める場面から始まり、素朴な力強さと哀愁を併せ持つ歌の数々が観客を魅了する。

やがて、シンプルな歌を華麗な合唱にアレンジし、踊りも交えた公演は大成功を収め、そして創設者の男と、彼がオーディションで発掘した歌手との間に愛が芽生えていく。しかし、当局は劇団にスターリン賛歌を歌わせ、絶望した男は亡命を決意するが…、という物語。シンプルにして運命的な愛の物語を効率的につむぐ編集も絶妙で、話法、音楽、そして研ぎ澄まされた映像美。これ以上言葉は無い…。

陶酔した気分で外に出て、次の上映へ。

10時45分から、コンペ部門でクリストフ・オノレ監督新作『Sorry Angel』。90年代初頭を舞台にした、35歳の男性小説家と22歳の青年との愛の物語。エイズによって愛が死へと繋がった時代であり、自伝的とは言わないまでも監督の90年代に対する思いが込められ、映画の細部に説得力が宿っている。

昨年のカンヌで好評を博した『BPM ビート・パー・ミニット』に続いて90年代とエイズがモチーフになっている点が興味深く、偶然なのか、それとも何かの理由が見いだせるのか、今という時代の背景との関連を考えるのも面白い。オノレ監督作の中では僕はもっとも素直に接することのできる作品で、その理由を追ってゆっくり考えたい…。青年役のヴァンサン・ラコストが好演。

上映終わり、14時から2件ミーティング。

本日は15時から市内のレストランを貸し切って「ジャパン・パーティー」が催されるので、僕も主催者のはしくれとして参加する。本格的な寿司が振る舞われ、来場ゲストに大好評で嬉しい。どうしても上映が気になってしまうけれど、ネットワーキングも大切だ! ということで、17時50分まで3時間近く来客のみなさまとたっぷり交流。とても有意義な時間となった!

閉会寸前に座を辞して、ダッシュで18時の上映へ。「監督週間」部門のブラジル映画で『Los Silencios』。コロンビアの混乱地域から逃れた母と子どもがアマゾン河に浮かぶ小さな島にたどり着き、そこで亡くなったはずの父親の亡霊が現れる…、という物語。

ベアトリズ・セニエ監督が10年近い歳月を経て完成させた作品で、この世とあの世の不思議な交流をじっくりとしたテンポで描いていくタッチがとても心地よい。政治的メッセージも明快でありながら押しつけがましさがなく、映像も美しい。ブラジル映画の充実ぶりを証明する佳作だ。

上映終わって20時。スーパーに寄ってサラダを買い、宿に戻って食べてからパソコンを少し叩き、21時にまた外に出て22時からの上映へ。

「ある視点」部門のアルゼンチン映画で『El Angel』という作品。上映前に大勢のスタッフとキャストの登壇があり、なんとプロデューサーに名を連ねているペドロ・アルモドバルもその一員としてサプライズ登壇!ルイス・オルテガ監督の挨拶に続いてマイクを渡されたアルモドバルは、「今日は私の夜ではないので、座を奪ってはいけない」と断りながらも長々と話しはじめたので、司会のティエリー・フレモー氏が脇でそれをからかって場内大爆笑。なんとも幸せな映画祭の雰囲気だ。

映画は、実在した連続強盗殺人犯を描く物語で、主人公は高校生にして天才的な強盗の才能を発揮したアンチヒーロー。極悪犯に違いないのだけど、アルゼンチン期待の新鋭であるルイス・オルテガ監督はブラック・ユーモアをふんだんに盛り込みながら明るい作風に仕上げ、その鋭い才能を如何なく発揮している。音響と音楽も大きな効果を上げ、そして主演の俳優の魅力がハンパではない。上映が終わると場内は溢れんばかりの大喝采に包まれ、「ある視点」部門の序盤のハイライトとなった!

宿に戻って0時半。同僚と少し打ち合わせをして、買い置きのパンをかじり、ブログを書いているとどうしても2時半を回ってしまう。暴力的な眠気に抗えず、今日はこのまま手抜きブログになってしまう…。ダウンです。

《矢田部吉彦》

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