そもそも、なぜ『銀魂』だけがヒットしたの?

人気少年コミックの映画化、豪華なキャスティング、ド派手なプロモーション…などヒットの理由はいくらでも挙げられるが、“同じ条件”で製作されたライバル作品がことごとく撃沈した2017年をふり返ると、やはり実写版『銀魂』にしかない魅力と強みがあったのだと言わざるを得ない。
まず、荒唐無稽な設定に漂う“ゆるさ”と、なかなかお金をかけられない邦画界のVFX事情を逆手に取った“チープさ”が、絶妙にマッチしたことで、独特で新鮮な『銀魂』ワールドを生み出したこと。これが大きな差別化となり、作品のクオリティは下げず、観客のハードルを下げることに結びついた。たとえ原作を知らなくても、「何だか楽しそうだし」と花火大会感覚で、気軽に映画館に足を運んだ人も多かったはず。「コケたらコケたで『銀魂』らしい」。そんな開き直りも痛快だった。

まるで寅さん! 坂田銀時からあふれ出る“人情み”

こうした作品力は、ファン待望の新作『銀魂2 掟は破るためにこそある』にも踏襲されている。
加えて、前作の大きな見どころだったアクションはさらなる飛躍を遂げた。韓国のアクションチームを起用した“身体表現”の追求は今回、韓国と日本のチームが混合でアクション演出を手がけたことで、よりハイブリッドな高みを見せつける。キャスト陣の躍動感も前作比200%。現場の熱意に、キャラクターが自然と突き動かされる姿は胸アツだ。

何より『銀魂』シリーズ、そして主人公である銀ちゃんこと坂田銀時からあふれ出る“人情み”には、見れば誰もがホロっとさせられる普遍性がある。まるで『男はつらいよ』の寅さんこと、車寅次郎なのだ。平成最後の夏を盛り上げること間違いなしの『銀魂2 掟は破るためにこそある』。平成の寅さん=銀ちゃんの大暴れが、新たな元号になってもスクリーンで見られることに期待したい。そう強く思わせるシリーズ最新作だ。
