作品賞にひた走る『1917 命をかけた伝令』、はたまた『パラサイト 半地下の家族』が歴史を動かす?
9作品がノミネートされた今年の作品賞で、本命と目されているのが、全編ワンカット撮影も話題を集める戦争ドラマ『1917 命をかけた伝令』。さらに『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』や『ジョーカー』、韓国映画初の候補となった『パラサイト 半地下の家族』など例年以上にバラエティに富んだラインナップとなった。
――いよいよ作品賞の予想をお願いしたいのですが…。予想とは別に、応援している作品もあると思いますが。
高島:そうですね。本命を予想すると、やはり『1917 命をかけた伝令』になりますね。本当に、あの臨場感はすごいの一言。戦場に引き込まれる感覚でしたし、兵士たちが味わう渇きまでも、体感できたというか。映画として新しい試みですし、撮影に至るまでの努力も、確かに高く評価されるんじゃないかと思いますね。

カビラ:うーん、確かに『1917 命をかけた伝令』がフロントランナーではありますけど、僕は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を推したいですね。ちょうど映画の舞台になる1969年って、僕はホームステイで叔父が暮らすカンザスにいたので、シャロン・テートの事件は強烈に記憶に残っていて。映画としてもハリウッド最後の黄金期の息吹を伝えつつ、残照というか哀愁を描き切っている。同時に歴史を変えちゃう(笑)遊び心もあって、クエンティン・タランティーノに何かしらの功労賞を与えたいと考えるアカデミー賞会員は少なくないと思います。次回作で引退するとも言われていますし。
――アメコミが原案となった『ジョーカー』、カンヌ映画祭でパルム・ドールに輝いたブラックコメディ『パラサイト 半地下の家族』といった、作品賞の歴史では“異色”といえる秀作も名を連ねています。
カビラ:生中継の案内役としては、『パラサイト 半地下の家族』が歴史を動かす瞬間を視聴者の皆さんと共有したいという気持ちがありますね。それにしても、今年は作品賞候補の振れ幅がすごいですよね。戦記物もあれば、古き良き時代へのオマージュも。『ジョーカー』や『パラサイト 半地下の家族』は格差社会の断絶を描いていますし、誰もがどれかを推したくなるチョイスになっている。もしかすると、投票者も驚く結果が待っているかもしれないし、アカデミー賞は「語り継がれること」にこそ価値があると思いますから。

高島:カビラさんがおっしゃるように『パラサイト 半地下の家族』が作品賞に輝いたら、まさに新しい時代の到来ですよね。アジア作品初という点も含めて、応援しています。個人的にも大好きな作品で、コメディ色も強いので最初は大笑いしているんですけど、気づいたら転がるように、引きずり込まれる…。その恐怖というか、奇妙さは『ジョーカー』にも通じるものがありますね。笑いと恐怖は表裏一体なんだなと。

「生中継!第92回アカデミー賞授賞式」は2月10日(月)午前8時30分~ [二] [同時通訳]/21時~[字幕版]WOWOWプライムにて放送。