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【インタビュー】果てない魅力の底に堕ちて…はじめての、もっと知りたい、俳優・綾野剛の素顔

アスリートのごとく、堅実に役に打ち込む姿を現場で目にする機会が観客にはなくとも、物語内の一挙手一投足で「綾野剛」ではなく「その人物」がさも存在しているかのように受け止められる。ゆえに、役を生きるための途方もない努力も想像に難くない。

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綾野剛『影裏』/photo:You Ishii
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渾身作『影裏』を2020年に投下するのは「とても意義のあること」


綾野さんの最新主演作は、松田龍平さんと初共演を果たした映画『影裏』。『ハゲタカ』や『3月のライオン』で知られる大友啓史監督が、熱いラブコールを寄せ、『るろうに剣心』以来のタッグが実現した。第157回芥川賞を受賞した沼田真佑氏の小説をもとに映画化された本作では、綾野さん演じる主人公・今野秋一が、転勤で移り住んだ盛岡にて、日浅(松田さん)と出会い、心を通わせ、やがて彼の光と影に直面する日常が描かれる。

松田さんとの共演について、「僕が役者を始めた頃には、龍平はとっくに始めていて、ずっと観てきていました。理屈のない安心感があったというか。彼とだったら、むしろ今(の共演)で本当によかったと思います」と、振り返った綾野さん。松田さんの存在は「稀人だなと思う」と、つぶやいた。

彼の表情には情報過多が一切なく、サービスもなく、どんなことを考えているのかを、こちらがどんどん知りたくなる。その先を何も推測できない果てしなさが、やっぱりある。表情で訴えかけてくるというより、こう…佇まいや機微みたいなものが僕たちの琴線に触れてくるわけで。日本でも本当に、そういった表現をできる数少ない役者のひとりだと思います」。

『影裏』(C)2020「影裏」製作委員会
物語では日浅にリードされるよう、今野が少しずつ心をほどいていく。職場でのたわいもないやり取り、何度も酌み交わす家での酒、ときに川釣りへ、喫茶店へ、薄暗い映画館へと繰り出しては、ふたりの蜜月が紡がれる。観客は、今野が日浅に対して募らせる想いに気づかされ、他方で日浅の瞳の奥が捉えられないほど深いことにヒヤリとする。やがて、ある一夜が訪れる。

「日浅に踏み込んで、今野のマイノリティーな部分がグッと出るシーン、ありますよね。今野は、心のひだの数がすごく多かった。そのひだを楯に日浅に飛び込んだ姿勢は、もちろん求めたい思いもあるけども、彼の存在が確かであることを証明したかったように思えるんです。今までにない圧倒的な距離の近さに、瞬間的に心を奪われてしまう感覚っていうか。彼は、確かにそこに存在しているんだという自負を持ちたかった。龍平が持つムードや資質が、あの急な行動を成立させたのかなと思っています」。

『影裏』(C)2020「影裏」製作委員会
『影裏』とともに、2019年に出演した『楽園』、『閉鎖病棟 ―それぞれの朝―』の3作品を、それまでの5年間で取り組んできた方法論を全て捨てて、大変化を遂げた「3部作」であると、綾野さん自身が表現している。『影裏』については、格別、「渾身の一作」と言い切った。

「僕は『影裏』を国際映画だと思って向き合っていました。フィクションではありますが、起こっていることはノンフィクションなわけで、現実にあったことも描いています。だからこそ、…その何百万、何千万というたくさんの人たちのひだの一片に過ぎないけど、その一片の人が感じたあの事実を、世界に届けなきゃいけない、という思いでした。今、龍平と渾身の『影裏』を、大友啓史監督という圧倒的な強者と共に投下する。それが2020年、オリンピックイヤーであることは、とても意義のあることだと思います」。

「我々はいつだって裸足で走っている」とも綾野さんは言った。痛みを伴いながら、ボロボロになりながら、素足で走った果てに完成した作品が、輝かないわけがない。気づけば、私たちはスクリーンの彼にくぎ付けになり、その魅力に何度だって心地よく堕ちていくのだ。

綾野剛『影裏』/photo:You Ishii
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《text:赤山恭子/photo:You Ishii》

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