本作の監督を務めるのは、映画『Super Tandem』、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭グランプリに輝いた『孤高の遠吠』、間宮祥太朗と組んだ商業映画デビュー作『全員死刑』などで知られる小林勇貴監督。直接、本作に込めた想いなどを聞いた。
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批判したいのは個人ではなく“社会”の方
――脚本担当の鈴木おさむさんと初めて組まれてみて、いかがでしたか?
大胆な展開や構成が魅力で、自分の演出したいこととも共通するところがあって共感しました。
――本作のキャスティングにも小林監督は関わってらっしゃるのでしょうか?
一部関わっています。第2話では、これまで一緒に演ってもらった前野朋哉さんや山中崇さん、濱正悟さんなどに出演してもらっています。また、最終話でも一部関わっている部分があるので、それは配信を観てからのお楽しみということで。
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――本作は「お酒によってあぶり出される人間の本当の弱さや愚かさ」がテーマになっているかと思いますが、監督はどんな想いを込めて本作を作られたのでしょうか?
作ったエンターテインメントが裁きになってはいけないと思いました。物語の構造自体が一見したところ人のことを論っている(あげつらっている)かのような部分もあるので、それが“裁き”に見えないようにと意識しました。お酒にまつわるトラブルって日々類似のニュースが報道されていると思うんですが、実際のニュースを想起させようとか、飲酒トラブルの時事ネタを放り込んで話題にしたいという意図は演出する私には全くなく、それより人が人に対して犯してしまうこと自体を描きたいなと思いました。ただ、それも個人を批判したいのではなく、私がいつも批判したいのは“社会”の方なんです。
第1話で主役の酒野が過ちを犯した人に対して「でもあなたのような方が優れているとされる社会ですよね」という指摘をしていて、人を生きづらくさせている社会について描きたかったです。
――確かに登場人物はみんな積極的に自分の意思で飲んでいるというよりは、仕事のために、場を盛り上げるために、仕方なく飲んでいるケースが多いように見えました。
はい、それを美徳とする社会がその背景にあると思います。
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――お酒を強要されるような「アルハラ」は、小林監督自身の世代からするとあまりイメージが湧かないのかなと思いますが、いかがでしょうか?
私自身は、お酒を強要されるというようなことは全く受けたことがありませんね。「お酒」というのはあくまでテーマを抽象化したものであって、「お酒を強要する」という行為自体は減っていたり、私のように世代によっては全くなかったりするかもしれませんが、「人が人に何かを強要する」という行為自体は必ず今もずっと起こり続けていることだと思うので、お酒に限ったこととしてではなく観てもらえると良いなと思います。
――仰る通り、どの登場人物も“お酒”というツールを通して、その裏にあるもっと別の真意を強要させられているように見えました。ちなみに小林監督自身はお酒は飲まれますか?
一人で飲むことはないんですが、皆とお酒を飲むような場では楽しく飲みます。