『ジョジョ・ラビット』で脚光を集め、M・ナイト・シャマラン監督最新作『オールド』にも出演するトーマシン・マッケンジー、そしてNetflixオリジナルシリーズ「クイーンズ・ギャンビット」でゴールデン・グローブ賞ミニシリーズ/テレビムービー部門の主演女優賞を受賞したアニャ・テイラー=ジョイが競演する『ラストナイト・イン・ソーホー』。60年代ロンドンから現代にも通じる恐ろしい出来事を描いた本作で、ファッションが役作りにもたらした影響についてトーマシンとエドガー・ライト監督が語った。
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映画冒頭、ぼんやり浮かぶシルエットに目を奪われ次第に明るみになるのは、デザイナーを夢見るエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)の姿。彼女は自作のドレスを纏い、愛してやまない60年代の品々に囲まれながら、レコードから流れてくる60年代の音楽に身を委ねる。
それは現代なのか、60年代の話なのか――。一瞬にして目が奪われる印象的なシーンが冒頭から訪れる。エロイーズが纏うドレスをはじめ、本作の衣装を担当したのは、『ブルックリン』『17歳の肖像』など、クラシカルでいて、凛とした女性の衣装を手掛けてきたオディール・ディックス=ミローだ。その仕事ぶりは、2つの時代、同じソーホーという場所でそれぞれ夢を追いかける女性たちを演じたトーマシンとアニャの衣装でいかんなく発揮されている。
■エドガー・ライトが明かす「冷酷な現実をみせるのにいいオープニング」
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エドガー・ライト監督は彼女の起用について、「60年代のファッションではあるけど、ありきたりなものはとちょっと違うこと。僕自身その時代を経験したわけじゃないんだけど(笑)、観ていてリアルに感じるか、ということを重視する。彼女の作るものはすごくリアルに感じられるから。実際に会った時、アイデアをルックブックにまとめてきてくれたんだけど、まさに僕が求めているものそのものだった」とふり返る。
「サンディ(アニャ)が初めて登場するシーンでは、ピンク色の流れるようなドレス、ダンスがあるのでそれが映えるようなものを、とかなり頭を悩ませた」と監督。「衣装デザインの中でもいちばん大変だったと思うけどとても満足している。鑑賞したファンが2人を絵にしてくれたり、ハロウィンでコスチュームとして着てくれた人もいて僕はとてもうれしかった」と言う。
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冒頭のシーンについては、「新聞のドレスは、服を作る時に型紙を使ってトレースすることはよくあるから、そのアイデアからきている。いいなと思ったのは、電気がつくとじつはそのドレスが新聞、ということがわかること。グラマラスなことに対しての対比のようなじつは冷酷な現実をみせるのにいいオープニングだと思った」と明かしている。
■トーマシン・マッケンジー「ファッションはこの映画の大事な一部」
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また、トーマシンは「新聞紙で作った自作のドレスは、とても細かくて複雑にできています。ロンドンに到着した時、エリー(エロイーズ)は手作りのオーバーオールにチーター柄のファンキーなタートルネック、大きな茶色のジャケットをあわせてる。三つ編みも手伝って、とにかく若くて純粋でナイーヴ、ワクワクしている人にみえます。彼女が手作りした“田舎のネズミ”スタイルなんですよ(笑)」と話す。
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「エリーの衣装を選ぶため、今までないほどに衣装チームと親密に仕事をしました。ファッションはこの映画の大事な一部なのです。彼女(オディール)のスタイルは個性的でかっこいい。メイクもウィッグなどもすばらしくて、沢山のアドバイスをもらい意見交換しました。言葉の訛り指導、衣装、ヘアメイクのすべてが役作りの助けになりました。エリーという役に息を吹き込んでくれました」と、オディールら衣装チームへの絶賛を惜しまない。
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そして、「(アニャは)沢山のジョイ(喜び)を現場や作品にもたらしました。勇気、色気、意思の強さ、ウィットに富んだ個性をサンディに与えました。彼女は見事でしたし、私が出会った中でいちばん熱心な勉強家でとどまることをしりません」と、アニャにも称賛を贈る。
現代と60年代、ふたつの時代で生きるサンディとエロイーズは共に、情熱と決意を持って歩みはじめ、大きな夢と期待とともにロンドンへ移り住む。人を惹きつけてやまない煌びやかなネオンライトの影の部分を、正面から、彼女たちの繋がりを軸に描き切ったエドガー・ライト監督の最新作は、ジャンルを超えた“いまの時代”に送り出された新境地になっている。
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『ラストナイト・イン・ソーホー』はTOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイントほか全国にて公開中。