3月17日から全国公開され、大ヒット中の『わたしの幸せな結婚』。孤高の軍隊長・久堂清霞(目黒蓮)と不遇な女性・斎森美世(今田美桜)のラブストーリーにミステリアスな展開、ダイナミックなアクションはもちろん、物語の舞台である“明治・大正を思わせる架空の世界”も話題になっているが、実際の撮影は近畿地方でオールロケを敢行。訪問可能な名所も数多く登場するため、鑑賞後に“聖地巡礼”を行うファンが早くも増えている。
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まず、作品の中でひと際目を引くのが、清霞と出会う前の美世が暮らしていた斎森家。美世にとっては意地悪な継母や異母妹にいじめ抜かれる苦い思い出の場所だが、建物自体は華やかな洋館とそれに連なる和風建築。
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撮影場所になったのは、鹿鳴館の設計者としても知られるイギリス人建築家ジョサイア・コンドルが手掛けた六華苑(三重県桑名市)。美世が顔面にお茶をかけられるダイニングや両親の愛を一身に受ける異母妹・香耶の部屋など、美術スタッフの手で一層華やかになった内観が、衝撃の映画冒頭に欠かせないものとなっている。
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一方、清霞が暮らす久堂家は、洗練された日本家屋。喧騒を嫌い、静寂を愛する清霞らしいお屋敷だが、ロケ地は京都府舞鶴市の東郷邸。こちらは、日露戦争の連合艦隊司令長官だった東郷平八郎が、舞鶴鎮守府長官時代を過ごした場所として知られている。
この久堂家で美世は清霞と初めて顔を合わせ、「私が出て行けと言ったら出て行け。死ねと言ったら死ね」と冷たく言い放たれたり、食事に毒を盛ったのではないかと疑われたり…。清霞と美世の歩みを語るうえで外せない場所だが、撮影ではちょっとした受難も!?
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ここでの撮影が行われたのは、昨年の2月下旬から3月にかけて。スタッフ一同、しんしんと降り続ける舞鶴の雪と格闘することになった。しかしながら、美世役の今田さんが東郷邸に現れるなり、天気が突如良くなるというミラクルな一幕も。撮影現場を終始明るく照らし続けた今田さんらしい逸話が生まれた。
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そんな美世と清霞の記念すべき初デートのシーンは、奈良県橿原市今井町で撮影。こちらでは、江戸時代からの古民家を有する町並みが町を挙げて保存されている。まるで時代劇のような雰囲気で、足を1歩踏み入れればタイムスリップした気分になれるほど。
反物屋で清霞が美世のための着物を選ぶシーンは、町並み保存の支援業務を行う事務所を店内に見立てて撮影された。
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また、2人で店の外を歩くカットも、道のマンホールを砂利のシートで覆うなど細部の調整はなされているものの実際の町並みをバックに撮影。実は、清霞役・目黒さんのクランクインはこの今井町だったのだが、町並みが気に入った目黒さんは撮影の空き時間に通りを少し散策したりもしていた。
ちなみに、デートの最中、清霞と美世が生い立ちを語り合う甘味処は、京都府京都市にあるきんせ旅館のカフェバーで撮影。木の床やステンドグラスから大正ロマンの香り漂い、本作の美術スタッフが「本当に素敵な空間!」と絶賛するこちらも、ほぼそのままの状態で撮影に使われている。
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また、本編では帝都の治安を守る清霞のお仕事事情も物語の鍵を握るが、そんな彼の勤め先が陸軍省。その指揮下にある対異特殊部隊の屯所は、京都府京都市の聖母女学院本館で撮影された。こちらの校舎は赤レンガのレトロな建造物で、もともとは陸軍の庁舎として建てられたもの。
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普段は女子学生たちの学びの場だが、対異特殊部隊の面々は全員男性で、屯所も男子校感が充満。冷酷無慈悲と評判の清霞が仲間に囲まれ、愛すべき素顔を垣間見せるシーンだけに、実際の撮影でも目黒さんら男性キャストが楽しそうに過ごしていた。
そして、2月生まれの目黒さんの誕生日を祝う場になったのもここ。現場では、大勢の男性キャストを中心とした野太い声の「ハッピーバースデー♪」が轟く事態に。ただし、屯所の外で行われるクライマックスのバトルは京都府舞鶴市の舞鶴赤レンガパークで撮影されているので、併せてチェックを。
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最後に、こちらも注目しておきたいのが帝都のトップに君臨する帝(石橋蓮司)や帝位継承者の堯人(大西流星)らが暮らす宮城。荘厳な敷地内に国宝建造物を有する専修寺(三重県津市)が撮影に使用された。三重県初の国宝建造物・御影堂は帝の部屋に、敷地の一角にある竹林は清霞と堯人が複雑な胸の内を打ち明け合う場所に。
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また、正門は美世が清霞を迎えに来るラスト近くのシーンで使用。その印象深いシーンで、目黒さんと今田さんは揃ってクランクアップした。
スタッフもキャストも全員が「歴史的建造物を巡る旅のよう」と口を揃える『わたしの幸せな結婚』の撮影だった。