「攻殻機動隊」シリーズ最新作『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』が間もなく公開。1989年に原作が発表されて以降、いまなお多くのファンを魅了する「攻殻」シリーズの魅力は、少し未来を予測したような世界観と社会問題にフォーカスしたストーリーにあるという。
「攻殻機動隊 SAC_2045」は、「攻殻機動隊 S.A.C.」シリーズの神山健治と、「APPLESEED」シリーズの荒牧伸志によるダブル監督、Production I.Gと、SOLA DIGITAL ARTSの共同制作によるアニメーションシリーズ。
シーズン1が2020年4月より、シーズン2が2022年5月よりNetflixにて世界独占配信された本シリーズを、日本アカデミー賞6部門受賞の『新聞記者』や『余命10年』等、実写映画で活躍する藤井道人を監督に迎え、シーズン1に新たなシーンを加えて再構成した劇場版『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』が2021年11月より全国劇場公開。そしてこの度、シーズン2に新たなシーンと視点を加えて劇場版として再構成した劇場版が本作だ。
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人々の意思が“電脳”に繋がれた近未来において電脳犯罪に立ち向かう全身義体のサイボーグ・草薙素子率いる攻性の組織、公安9課。1989年に士郎正宗により発表された原作コミック『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』を起源とし、「攻殻機動隊」シリーズとしてアニメーション、ハリウッド実写映画など様々な作品群がこれまで展開されてきた。
1989年当時ではまだ普通の人々にとってはそれほど身近ではなかったインターネットや電脳犯罪を主体に描いた作品にもかかわらずその鮮烈なSFアクションと、時代を予見した展開は、いまなお新たなファンを世界中で獲得し続けている。
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特に長年多くのファンを驚かせてきたのが、主人公の草薙素子をはじめ多くの人間が電脳化され、全身義体のサイボーグも当たり前に存在するSFの世界観でありながら、シリーズを通して描かれる身近な社会問題を含んだ濃厚なストーリーだ。
シリーズ前作となる『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』で描かれたのは高齢者社会や難民問題、そしてワクチン問題。放送開始された2002年当時ではまだそれほど身近ではなかった社会問題たちがまるで予見するかのように描かれ、その陰謀をめぐる素子たちの戦いはアニメファンに限らず多くの視聴者を魅了した。シリーズ最新作となる『攻殻機動隊 SAC_2045』でも、物語の最初に描かれたのは、ただの戦争ではなくAIが管理する経済行為としてコントロールされた戦争=サスティナブル・ウォー(持続可能戦争)だ。
Netflixでシーズン1が配信された当初(2020年)は、いまと違って“終わりのない戦争”を身近に感じている人は少なかった。しかしながら、2023年のいまでは現実とのシンクロ度もかなり高くなっている。
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そして、今回『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』で描かれるのは、AIによって人知を超えた能力を覚醒させた新たな人類=ポスト・ヒューマンの出現、“現実”と“電脳世界”を同時に生きるという考え方を基に新世界を作り出そうとする人物たちとの戦いといった社会問題だ。一般にもAIが普及し、フェイク画像やフェイク動画が社会問題化し、SNSやVRによって現実とバーチャルの世界の差が縮まった現代だからこそリアルに感じられるストーリーとなっている。
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しかし、そんなストーリーを作り上げてきた神山健治監督は、これまでも決して未来予測をしたわけではないと語る。「僕はやっぱり『攻殻』の世界全体が、WEB3.0になったほうが、この“先”があるとしても可能性があると思ったんです。これから世の中がどう進んでいくかというと、かつて考えられたサイバーパンクのような未来ではなく、もっと異なる方向だろうというふうに考えたわけです。それを写し取れるような世界であったほうが、これからいいだろうと」と語るように、あくまで“今”を考えたからこその希望が描かれている。
Netflixで配信されている「攻殻機動隊 SAC_2045」シーズン2とはまた異なるクライマックスが描かれた劇場版となる本作。全ての終わりにはどんな物語が待ち受けているのか…。ぜひ劇場で見届けてほしい。
『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』は11月23日(木・祝)より3週間限定公開。
¥38,500
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)