共演シーンは
“絶妙な距離感”で
――おふたりの共演シーンは電車の中やファミリーレストランが舞台ですが、構図的にも距離感が絶妙でしたね。
當真:電車のシーンに関しても事前に動きや距離感をリハーサルする時間を取っていただけました。人に押されて電車に乗り込んでくるシーンは何回も練習しましたが、その段階で監督の中には明確に「こう撮りたい」というイメージがあったのではないかと思います。
細田:電車のシーンはその場所を借りられる時間も限られていますし、日照時間の中で撮りきらなければいけなかったので、部署関係なく総力戦でした。そういった意味は大変でしたが、まずはこのシーンを乗り越える!という空気が現場全体に流れていました。石井監督はあまりテイクを重ねる方ではありませんが、心地いい緊張感の中で集中して臨めました。

――おふたりは2023年放送のNHK大河ドラマ『どうする家康』でも共演されています。
細田:『人はなぜラブレターを書くのか』の劇中で、信介とナズナは一言も会話をしません。そうした距離感が台本に書かれているからこそ、お互いに初共演ではないけれど近くなりすぎないようにしよう、と意識していました。
當真:私は結構人見知りで、共演させていただく方に対して“どう話したらいいんだろう”と距離感を探るのが苦手なタイプです。そんななか、細田さんと別の作品でご一緒させていただいていた事実があるだけでお芝居も硬くなりすぎず、ほどよい緊張感を持ってできました。
――初共演時には撮影の合間に、好きな食べ物の話をしたそうですね。
當真:そのときに「人と話すのが苦手なんです」というお話をしたのですが、会話の流れで細田さんが聞いて下さって「ハンバーグです」と答えました(笑)。
細田:僕も人見知りで会話が得意じゃないのですが、直近の現場で「まずは好きな食べ物から聞いていくのが大事なんだ」と学んで、早速仕掛けたというだけです(笑)。その場には久保史緒里さんも一緒にいらっしゃいましたが、3人で漫画の「ハイキュー!!」が好き、という話もしました。

――おふたりは本作で過去パートを託されましたが、完成した本編をご覧になっていかがでしたか?
當真:私は「答え合わせが出来たな」という感覚になりました。ナズナは電車の中で助けてくれた彼のことしかしらないので、友人から聞いた情報はありつつも実際はどういう人なのかがわかりません。出来上がった映画を観た際に“こういう仲間がいたんだ、こういう一面があったんだ”と知ることができました。大人になったナズナさんに対しては純粋に映画を楽しむ気持ちで観ていて、自分が出演させていただいた映画の試写でこんなに泣くのか……と思うくらいにしっかり泣いてしまいました。
細田:僕も相当泣きました。自分が関わっている作品の試写はどうしても脳内反省会をしてしまうので居心地が悪いものですが、初めてここまで客観視できた気がします。いちお客さんに近い状態で純粋に観られて、勝重さん(菅田将暉)が隆治さん(佐藤浩市)に会いに行くシーンや、ナズナさん(綾瀬はるか)や良一さん(妻夫木聡)の家族会議の瞬間など台本を読んだ際に「泣くだろうな」と感じた部分でもれなく泣きました。

ただ一つ不思議だったのは、僕は信介さんが亡くなることやそれによって悲しむ人がいることをわかっているのに、菅田さん演じる勝重さんが、信介さんが亡くなったことを知るシーンで泣いてしまったことです。まだうまく感情を説明できませんが、お芝居以上の何かを見させてもらったからだと思います。
