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【インタビュー】是枝裕和監督 ソン・ガンホやペ・ドゥナらと過ごす中で大事にしたものは現場の“ライブ感”

是枝裕和監督の最新作『ベイビー・ブローカー』が、第75回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞(ソン・ガンホ)とエキュメニカル審査員賞を受賞した。

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是枝裕和監督『ベイビー・ブローカー』撮影:斉藤美春
是枝裕和監督『ベイビー・ブローカー』撮影:斉藤美春 全 16 枚
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「どうしたら母親が子どもを捨てずに済むのか」そのヒントを描く


――ソン・ガンホさんは、日々の編集をご覧になって「7テイク目より4テイク目の芝居のほうがいいはず」といった提案もされたそうですね。

あれはびっくりしましたね。まず、全部が頭に入っているのがすごい。彼は現場に早めに入って「昨日撮っていたシーンを繋いでいたら見せてほしい」と自分から編集担当のところに来て、ヘッドフォンをつけて確認していて。そのあと僕のところに来て「昨日のシーンはとても素晴らしかったし良い編集だったけど、自分のシーンはいま監督が使っているものよりももしかするとこっちのほうがいいかもしれないからもう一度だけ比べてみてほしい」みたいなことを必ず言い残す。そんな俳優は初めてでした。

――すごいですね…。脚本についても伺いたいのですが、是枝さんは現場で改稿や差し込みをされるかと思います。今回は日本語で書いて、韓国語に翻訳し、キャストやスタッフに渡す形で行われたのでしょうか。

そうですね。翻訳者が間に挟まるので当日に渡すのはなかなか大変だから、余裕を追って出すようにはしていましたが、今回はそこまで改稿はなかったと記憶しています。

今回は、「各登場人物がソウルに着いてからの流れは途中まで撮ってから決めます」と伝えて、答えを出さずに撮影を始めました。だから1か月くらいはその先のストーリーラインを出さなかったんですよね。現場やお芝居を見ながら「最後はどうなるんだろう」と考えて書き直すことを繰り返してなんとか着地したという形です。サンヒョン(ソン・ガンホ)のラストについても、色々なパターンを考えました。

――先ほどのソン・ガンホさんのお話含め、ある種のライブ感がある現場だったのですね。一方、冒頭のお話にあった通り、入念な取材を経たうえで撮影に挑むのが是枝監督のスタイルかと思います。

現場のライブ感を大事にするためは、一方で入念な下調べをしておかないとジャッジができない。むしろ両方ないと絶対ダメなんです。色々なリサーチを行うことで自分の中にストックが生まれて、それがあるから臨機応変に様々な方向に振ることができる。

――ちなみに今回、映画的に参考にしたものはあったのでしょうか。

ジョン・フォード監督の『三人の名付親』ですね。強盗3人が赤ん坊を抱えて砂漠をさまよう作品なんですが、悪人が善をなしてしまうところなど参考にしています。

――いまのお話にも通じるかもしれませんが、『ベイビー・ブローカー』を拝見して“共助”を感じました。悪人が善意を持つところもそうですし、コミュニティで子どもを見守るという部分、また張り込みをしているスジンに夫が差し入れをするといった描写からも、共にサポートしあって生きていく希望のようなものを抱いて。

その辺りは大事にしようと思っていた部分なので、わかってくれてうれしいです。

もちろんソン・ガンホさんが演じたサンヒョンは悪い奴だけど、イ・ジウンさん演じるソヨンにとってみればセーフティネットでもある。劇中にソヨンが「もうちょっと早く出会えていたら」と言いかけるシーンがあるけど、本来ベイビー・ボックス(赤ちゃんポスト)があるべき形とは何だろうか、という問いかけも兼ねていて。

つまり、どうしたら母親が子どもを捨てずに済むのか。映画の中でそのヒントは描きたいなと思っていました。


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《text:SYO》

物書き SYO

1987年福井県生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画WEBメディアでの勤務を経て、2020年に独立。映画・アニメ・ドラマを中心に、小説・漫画・音楽・ゲームなどエンタメ系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。並行して個人の創作活動も行う。

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