“声を通しての表現”で体験したこと
――来年日本公開の『愛を耕すひと』もそうですが、役の性格が寡黙だったり、作品自体が台詞を抑えたテイストだったりと、マッツさんが演じてきた役には台詞以外の表現を求められるものも多い印象です。
『ヴァルハラ・ライジング』に至っては台詞が全くないしね(笑)。『愛を耕すひと』に関して言うと、物語の舞台が18世紀なのも大きいと思う。当時の人たちは現代に生きる僕らほど、なんてことない会話を交わすようなことがなかった。でも、作品によっては膨大な台詞量に悩まされたこともあるよ。
――もちろんです。ただ、台詞以外の表現にも長けていますよね。
ありがとう(笑)。
――そして、今回のキロス役は表現の中心に台詞があります。演じる上で違いは感じましたか?
それはすごく感じた。僕たち役者は常々、カメラの前に立っている。言ってしまえば、カメラの前での姿が最大のツールなんだ。その点、本来なら声は2番目くらいのツールなのだけど、今回は声を通しての表現が求められた。
おかしなことに、だからこそ自由でもあったのだけど。もし僕が収録している姿を見たら、どれだけクレイジーな動きをしていたか分かるよ(笑)。動き回ったり、大袈裟に腕を振り上げたりしてね。そんなことは、カメラの前では絶対にしない。でも、そうすることに解放感を覚える自分もいたんだ。
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――『ライオン・キング:ムファサ』はディズニー史上、最も温かく切ない“兄弟の絆”の物語ですが、マッツさんの兄ラース・ミケルセンさんも素晴らしい俳優ですね。
プライベートのことは話さないようにしているのだけど、これだけは教えてあげる。僕は兄が大好きで、愛している。兄としてだけでなく、人として素晴らしいんだ。
――今や2人ともディズニーファミリーです。
そうだね! 兄も『スター・ウォーズ』の世界にいるから。