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【インタビュー】北川景子×森田望智「嘘をついたら撮ってもらえない」これまでになかった景色が見られた『ナイトフラワー』

映画『ナイトフラワー』で共演した北川景子と森田望智に、撮影のあれこれを振り返ってもらいながら、互いへの思いまでたっぷりと語ってもらった。

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北川景子×森田望智/photo:小原聡太
北川景子×森田望智/photo:小原聡太 全 15 枚
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映画『ナイトフラワー』で、北川景子は貧困の果てにドラッグの販売で日銭を稼ぐ2人の子供のシングルマザー・永島夏希を演じた。そのきっかけとなったのは、ある夜に売買現場にたまたま出くわしたこと。夏希は薬をとっさに懐に入れ、しばしの逡巡の後、近くのごみ捨て場から廃棄の餃子弁当もかっぱらう。死に物狂いの顔と髪を振り乱すさまは、何が何でも生き抜く渇望の姿が映し出され、これまでの“北川景子”像を大きく塗り替えた。

そんな夏希のボディガード役を買って出るのは、森田望智演じる芳井多摩恵。夜は風俗嬢として働きながら、格闘家としての成功を夢見るぶっきらぼうなファイターだ。森田のフィルモグラフィーといえば、「全裸監督」の黒木香、『シティハンター』の槇村香、「虎に翼」の猪爪花江と、記憶に残る役を次々とものにしてきた。多摩恵も同じく、堂々としたたたずまいと献身的な姿を併せ持ち、役を自身に染み込ませてスクリーンでひときわ輝く。

劇中、夏希が多摩恵に「家族になってくれへん?」と問う――いや、懇願する。シスターフッドや家族愛をも超えた大きな何か、定義することさえ無粋な何か、を観客は享受する。まるでドキュメンタリーのような、北川&森田でしか味わえない本作。撮影のあれこれを振り返ってもらいながら、互いへの思いまでたっぷりと語ってもらった。

内田英治監督との再タッグ
「迷うことなくやりたい」
「これまでになかった景色が見られる」


――内田英治監督とは、北川さんは二度目、森田さんは四度目のお取組みかと思います。オファーを引き受けた理由は何でしたか?

北川:一番は、内田監督からお声掛けをいただいたのでやりたいという気持ちでした。WOWOWの「落日」という作品でご一緒したときに、すごくフィーリングが合ったんです。監督は洋楽が好きで、私もUKロックが大好きだから、とにかく音楽好きという共通点で話が盛り上がりました。作品やお芝居のことじゃないんですけど(笑)。監督が「今度は僕が脚本と監督をやるときに、北川さんとご一緒したいです」と言ってくださって、私も「もちろんです!」と。「落日」の最後のほうに「売人の役って興味ありますか?」と聞かれて、「あります!やりたいです!」と即答しました。その後にお話をいただいたのが『ナイトフラワー』だったので、「あのときの売人だ!」とピンときました。迷うことなくやりたいです、となりました。

――となると、夏希の関西弁も北川さんがしゃべることを想定して、あて書きのような形だったんでしょうか?

北川:おそらくそうだと思います。監督が大阪に行かれたときに、関西人の親子を見かけてその会話が衝撃だったらしいんです。お母さんはすごく怒っているんだけど、子供が言い返していて、そのやり取りが漫才みたいに見えたそうで、「関西は一般の方でも、本当に普通に漫才みたいにやりとりしているんだ…!」って。怒っているのにユーモアがあることが、面白かったそうなんです。

夏希をそんな風にしたいとひらめいたので、「関西弁にしているから」と言われました。たぶん…私も神戸(の出身)なので見込まれているかな、と思います(笑)。私自身、話に全部オチをちゃんとつけなきゃいけない、誰かがボケたらすぐに突っ込まなきゃいけない、それが当たり前だと思っていたところもあったので。

――関西弁、母親で売人の役というあたり、いざ台本を読まれてはどのように感じましたか?

北川:一言では言い表せない衝撃がありました。夏希という人間はすごく一生懸命で、子供を大切に思う気持ちがあるお母さんじゃないですか。昼も夜も違う仕事をして頑張っているのに生活は良くならないし、最後は売人にまでなってしまって…。夏希にせめて夫がいたら違うけれど、夫は蒸発してさらには借金まで残されていて。なおかつ下の子は私にとっては大事な子供だけれど、世間的には発達に問題があると言われているので、預かってもらう先もなかなか容易ではなかったりする。そんな条件がすごく重なってしまうんです。

元から荒くれていたり、常軌を逸した人間じゃないのに、追い込まれて売人になるところがとにかく衝撃でした。腐った餃子弁当を拾ったり、薬物を売りさばくしかなくなってしまうんですよね。じゃあ夏希はどうしたらよかったんだろうとすごく考えたんですけど、答えが出なかったんです。その何とも言えないドーンとした気持ち、そんな印象を台本から受けました。

――森田さんは、「全裸監督」以来、「Iターン」「湘南純愛組!」の内田監督作品でした。同じく、お引き受けの理由からうかがえますか?

森田:格闘技で多摩恵をやっているという自分が、想像できなかったんです。思い描こうとしても描けなかったので、内田さんは何を私に見ているんだろう、とまずは興味が湧きました。同時に、内田さんの元でしか、この想像ができない役を掴むことはできないんじゃないのかな、という確信もあったんです。まったく想像できない、縁遠くて難しい役だからこそ、きっとこれまでになかった景色が見られるんじゃないかなと。やりがいを感じましたし、今まで出会えなかった自分に出会える気がして、ちょっとワクワクした気持ちでお引き受けしました。

――お二人がインするまでなるべくコミュニケーションを取らないようにしてほしいと、内田監督から要望があったお話は本当ですか?

森田:そのお話、言われて思い出したぐらいなんですけど…。

北川:言ってた、言ってた!

森田:言ってましたか! 確かに景子さんと会う機会はなくて、初めてのシーンが夏希にワセリンを塗るところだったんです。

北川:すごい大事なシーンでね!

――夏希と多摩恵が初めて出会った夜のシーンですよね。

森田:そうなんです。内田さんは「初めまして」の緊張感を大事にしたかったんだと思うんですけど、私は「わ!北川景子さんだ!!」と緊張しちゃって。多摩恵じゃなくて、私が緊張しちゃって、全然役になりきれてなかったんです。内田さんに「多摩恵じゃありません」みたいに言われました(笑)。

北川:「こないだ、さっくんとやってたやつやってよ」みたいに言われていたよね(笑)?

森田:そうです(笑)。その前に佐久間(大介 ※多摩恵の幼馴染・海役)さんとクランクインしていたのですが、撮影前に一度お会いする機会があったんです。幼馴染という設定もあって、「自分から積極的にコミュニケーションを取らなきゃ」と思っていたのですが、佐久間さんがとてもフレンドリーで気さくな方でした。会話のシーンからだったこともあり、自然と関係性が築けていたと思います。

でも景子さんの場合は、事前顔合わせ無しだったので本当に緊張して! 自分が上から目線でワセリンを塗らなきゃいけないので、「わー!どうしよう!!」と内心なっていました。それを内田さんが気づいて、「内田さんが会わないようにしよう、とか言うからですよ!(笑)みたいな話をしたのを思い出しました。「初めての緊張感は出ていてよかった」とは言われましたけど、結構苦戦しました。


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《text:赤山恭子/photo:小原聡太》

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