2019年の『ライオン・キング』で弟スカーの毒牙にかかり、息子を残して世を去ったムファサ王。そんな彼がいかにして王となったのか? そして、スカーはなぜ兄に刃を向ける存在となったのか? そのすべてが明かされる『ライオン・キング:ムファサ』で物語の鍵を握るのが、マッツ・ミケルセン演じる敵ライオンのキロスだ。
さまざまな役に取り組んできた“北欧の至宝”はキャラクターにどう息を吹き込んだのか、12月の日本を満喫する彼に話を聞いた。
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歌唱シーンは「少しだけ怖かったけど…」
――本編では、キロスのすべてが語られるわけではありません。マッツさん自身の中に、演じる上で大切にしたバックストーリーはありますか?
キロスの背景に関しては、バリー(・ジェンキンス監督)と少し話し合う程度に留めた。ただ、キロスがライオンの中でも異質の見た目なのは明らかで、動物界で生きるのが困難だったことも容易に想像できる。殺されるか、拒否されるかの中で、はぐれ者として生きる道を選んだんだ。
だからこそ、彼と同じ境遇にあったり、別の理由でのけ者にされた仲間を受け入れることで、自身のプライドを築き上げたのだとも思う。でも、その一方、はぐれ者としての生き方をやめたい思いも心のどこかに抱えていたんじゃないかな。
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――そんなキロスの胸の内を観客は歌を通しても知ることになりますが、オファーを受けたとき、歌唱シーンがあることは決まっていたのですか?
最初にバリーとSkypeで話したのだけど、30分ほど経った頃には歌うシーンがあるのだと分かった。「歌える?」と聞かれたからね。僕の答えは「ノー」だったけど(笑)。でも、「とりあえず何か歌ってみてほしい」と言うから、スマホに録音した音源を送ったら喜んでくれて。なので、覚悟を決めて頑張ることにしたんだ。
――映画の中で歌うのはどんな体験でしたか?
少しだけ怖かったけど、周りがサポートしてくれたし、いい雰囲気で取り組むことができた。レコーディングを行ったアビー・ロード・スタジオがすごく素敵でね。それに、歌うと決めたからには思いきり歌わないと。
――ミュージカルはお好きなんですか?
大好きだよ。ダンサー時代はミュージカルにもたくさん参加したし。ただ、ソロで歌うのは初めてだった。